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J2360 十六門記 聖覚 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0003A01: らん。我此命を惜。人豈惜ざらんや。我が情をもて。
J17_0003A02: 人の思を知べし。然則一向に專自他平等の濟度を祈
J17_0003A03: り。怨瞋悉消て。親疎同菩提に至らんことを願べし
J17_0003A04: と。言をはりて。心を直し西に向て。高聲に念佛し
J17_0003A05: て。眠がごとく命終し給ひけり。
J17_0003A06: 第三 最初入學佛法門
J17_0003A07: 永治元年七月十日改元辛酉の歳末に。當國菩提寺の院主觀
J17_0003A08: 學得業智鏡房の弟子となる。師。經書を授るに。性は
J17_0003A09: なはだ峻爽にして憶持して忘給はず。
J17_0003A10: 第四 離親登山學行門
J17_0003A11: 觀學。等侶に語て曰。此兒の器量直人にはあらず。
J17_0003A12: 何ぞ邊國に住しめん。はやく台嶺に登すべしと。而
J17_0003A13: 間此小童を相具して。母の所に行て此由を語。母聞
J17_0003A14: て。仁者をば無人の可留とぞ深思へば菩提寺に住つ
J17_0003A15: るさへ。猶遠と思なり。況登山せんをや。思よらざ
J17_0003A16: ることなりといへば。小童。昔本師釋迦尊は。御年
J17_0003A17: 十九にして。父の大王に忍。密に王宮を出で。終に
J17_0003B18: 成佛して。無量の衆生を濟度し給へり。今自は生年
J17_0003B19: 十三。暇を悲母に申し。法山に登り。出家修學して。
J17_0003B20: 父母の深恩を報じ。皆佛道に引導し。我も人も悟を
J17_0003B21: 開たてまつらん。返返歎給ことなかれ。努力恨給は
J17_0003B22: ざれと申せば。母の曰。誠に生子に訓らるるとは是
J17_0003B23: なり。傳聞。往昔釋迦如來は。御母の爲に摩耶經を
J17_0003B24: 説給へりと。今更に思合て。有難ぞ侍る。然はあれ
J17_0003B25: ども凡夫の拙習。恩愛の別忍難とて。落涙千行なり。
J17_0003B26: 小童。又傳聞參河守大江定基と云し人は。出家學道
J17_0003B27: し。老母の許を蒙て。大唐に渡り。彼國にして圓通
J17_0003B28: 大師の號を得。本朝の名を上たり。それ佛も流轉三
J17_0003B29: 界中。恩愛不能斷。棄恩入無爲。眞實報恩者と説給
J17_0003B30: ふ。自もはやく四明に登。すみやかに一乘を學て。
J17_0003B31: 二親の菩提を訪なば。豈眞實の報恩に非らんやと。
J17_0003B32: 條條に理をつくして申ければ。母も理に屈して。泣
J17_0003B33: 泣暇を許けり。觀學得業も。此問答往復を聞て歡喜
J17_0003B34: 心を迷し。落涙袂を潤て。申演ん方もなく。語少に

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