浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J16_0987A01: | る。其時官庫の御傳を。正本と名づけて。これを賜 |
J16_0987A02: | はりて。ながく吉水の寶藏にぞ納められける。をよ |
J16_0987A03: | そ我朝に。諸師の傳記おほしといへども。いまだか |
J16_0987A04: | くばかり盛なるはなかりき。ゆゆしき我祖の眉目に |
J16_0987A05: | して。宗門の光華にぞ侍る。其後吉水十二世誓阿上 |
J16_0987A06: | 人宸翰を秘藏し。思ひたまひけるあまり。もしはか |
J16_0987A07: | らざるに。非常の災などにあひて。兩部の御傳。時 |
J16_0987A08: | のまの烏有ともなりなば。いかばかり心うきわざな |
J16_0987A09: | るべければ。一部をば。いかにも世はなれたらん。 |
J16_0987A10: | はるけき名山に藏して。末の代の寳券に殘さばや |
J16_0987A11: | と。常に遠き慮をめぐらされけるが。老後に和州當 |
J16_0987A12: | 麻の往生院に退居し給ひける時。御正本は。あまた |
J16_0987A13: | の宸翰名筆備足して。畫圖の彩色まで。殊に勝れて |
J16_0987A14: | 嚴重なりしかば。これをば吉水の寶藏に留られ。副 |
J16_0987A15: | 本一部を隨身して。往生院の寶藏に納められけり。 |
J16_0987A16: | 今に相傳へて。かの寺第一の靈寳と崇むる是なり。 |
J16_0987A17: | 抑法皇も上皇も。年比吉水第八世の如一國師を。御 |
J16_0987B18: | 師範に召れて。淨土の三經五部一集の要義を。學ば |
J16_0987B19: | せ給ひしより。西方の御願ふかく。我大師の法恩を |
J16_0987B20: | 感荷し思しけるによりて。かくまでは叡慮にかけさ |
J16_0987B21: | せ賜ひけるとぞ。しかしより以來。御代ごとに。吉 |
J16_0987B22: | 水御傳を叡覽まします事にはなりぬ。ちかくは寬文 |
J16_0987B23: | 七年の秋。後水尾法皇大師の行狀にいみじき事な |
J16_0987B24: | ど。仰出されければ。我門主尊光法親王。御傳の盛 |
J16_0987B25: | 事をいとねんごろに言上せさせ給ふ。法皇も。兼て |
J16_0987B26: | きこしめしをよばせ給ふなりとて。叡覽あるべきよ |
J16_0987B27: | し仰下さる。やがてたてまつり給ひけるに。久しく |
J16_0987B28: | 御前にとどめられて。御愛敬淺からず。今更に大師 |
J16_0987B29: | 德行の高く。古代書畫の精しき事など叡感ましまし |
J16_0987B30: | て。これ誠に希代の名物なり。殊に數百年の星霜を |
J16_0987B31: | をくり應仁の兵火をものがれて。四十八卷具足して。 |
J16_0987B32: | 今の世まで傳りけるも。又奇なり。よろしく秘重し |
J16_0987B33: | て宗門萬代の規模に。そなふべしとぞ仰下されけ |
J16_0987B34: | る。法皇初て。御傳を叡覽ありしより。先代の帝の。 |