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J2340 円光大師御伝縁起 忍澂 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J16_0987A01: る。其時官庫の御傳を。正本と名づけて。これを賜
J16_0987A02: はりて。ながく吉水の寶藏にぞ納められける。をよ
J16_0987A03: そ我朝に。諸師の傳記おほしといへども。いまだか
J16_0987A04: くばかり盛なるはなかりき。ゆゆしき我祖の眉目に
J16_0987A05: して。宗門の光華にぞ侍る。其後吉水十二世誓阿上
J16_0987A06: 人宸翰を秘藏し。思ひたまひけるあまり。もしはか
J16_0987A07: らざるに。非常の災などにあひて。兩部の御傳。時
J16_0987A08: のまの烏有ともなりなば。いかばかり心うきわざな
J16_0987A09: るべければ。一部をば。いかにも世はなれたらん。
J16_0987A10: はるけき名山に藏して。末の代の寳券に殘さばや
J16_0987A11: と。常に遠き慮をめぐらされけるが。老後に和州當
J16_0987A12: 麻の往生院に退居し給ひける時。御正本は。あまた
J16_0987A13: の宸翰名筆備足して。畫圖の彩色まで。殊に勝れて
J16_0987A14: 嚴重なりしかば。これをば吉水の寶藏に留られ。副
J16_0987A15: 本一部を隨身して。往生院の寶藏に納められけり。
J16_0987A16: 今に相傳へて。かの寺第一の靈寳と崇むる是なり。
J16_0987A17: 抑法皇も上皇も。年比吉水第八世の如一國師を。御
J16_0987B18: 師範に召れて。淨土の三經五部一集の要義を。學ば
J16_0987B19: せ給ひしより。西方の御願ふかく。我大師の法恩を
J16_0987B20: 感荷し思しけるによりて。かくまでは叡慮にかけさ
J16_0987B21: せ賜ひけるとぞ。しかしより以來。御代ごとに。吉
J16_0987B22: 水御傳を叡覽まします事にはなりぬ。ちかくは寬文
J16_0987B23: 七年の秋。後水尾法皇大師の行狀にいみじき事な
J16_0987B24: ど。仰出されければ。我門主尊光法親王。御傳の盛
J16_0987B25: 事をいとねんごろに言上せさせ給ふ。法皇も。兼て
J16_0987B26: きこしめしをよばせ給ふなりとて。叡覽あるべきよ
J16_0987B27: し仰下さる。やがてたてまつり給ひけるに。久しく
J16_0987B28: 御前にとどめられて。御愛敬淺からず。今更に大師
J16_0987B29: 德行の高く。古代書畫の精しき事など叡感ましまし
J16_0987B30: て。これ誠に希代の名物なり。殊に數百年の星霜を
J16_0987B31: をくり應仁の兵火をものがれて。四十八卷具足して。
J16_0987B32: 今の世まで傳りけるも。又奇なり。よろしく秘重し
J16_0987B33: て宗門萬代の規模に。そなふべしとぞ仰下されけ
J16_0987B34: る。法皇初て。御傳を叡覽ありしより。先代の帝の。

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