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J1350 一枚起請弁述 義山 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0130A01: 觀房一代の間常に首にかけて人に披露せす秘藏して
J09_0130A02: 人にも見せす然るに河合の法眼と云ふ人あり加茂の神人と見へ
J09_0130A03: たりこれは師檀にして睦しく語り合ふ故に其樣子を物
J09_0130A04: 語りぬそれ故法眼懃切に望みけれは乃ち一枚を寫し
J09_0130A05: て授けけりそれより以來世間に流布して上人の一枚
J09_0130A06: 起請と云ふ也
J09_0130A07: 上來は俗化講錄終正德元天七月十日京都に於て
J09_0130A08: 義山和尚講之一二日にして終也
J09_0130A09: 一枚起請辨
J09_0130A10: 謹按此一紙示し殘し事勢觀房源智の請ひに應し給
J09_0130A11: へること也傳文分明なれは更に紛るる所なし一説に
J09_0130A12: 存別義敢難信用者歟解義勸進共に其益尠し世に
J09_0130A13: 一枚起請と名くる事是れ只一枚に記して釋迦彌陀爲
J09_0130A14: 證替往生大事被仰けれは實に可 恐誓言也され
J09_0130A15: は一紙に記せる誓言なる故に一枚起請とこそ名付け
J09_0130A16: 侍れ一枚起請の名は後人の名けし所也起請の名は上
J09_0130A17: 人の素意にも思召含ませられたり正しく題號を加へ
J09_0130B18: けるは後人の所爲にして自ら題し給ふとは見へすさ
J09_0130B19: れはこそ傳にも上人の一枚起請と名けて世に流布す
J09_0130B20: るは是也凡此一紙の趣き和語縱容にして多義を含み
J09_0130B21: 美言簡畧にして至要を括りけれはその深旨を窺ふに
J09_0130B22: 及ては一旦にして盡す事不能されは始より正見の
J09_0130B23: 徒にして習ひ聞く所の一家の安心起行は只この一
J09_0130B24: 紙に至極す更に餘に心を不可移然るに其趣き難
J09_0130B25: 心得樣樣思惟してかかる心得易き祖意を失ふはい
J09_0130B26: と悲しく覺え侍るその誤れる品品また一旦に難 述
J09_0130B27: 以爲らく宗の安心起行はこの一紙に至極せるとてそ
J09_0130B28: の唱へ大切に聞ゆれともさせる深旨をは盡すとも見
J09_0130B29: えぬものをなと和語の讀み易きをあなとりて大事の
J09_0130B30: 落居し難きをも知らさる也和語は吾か朝の詞天竺の
J09_0130B31: 陀羅尼なること今始まりたるにあらす上人此國の俗
J09_0130B32: を化するに廣く萬民の讀み易きをさきとして漢字を
J09_0130B33: 用ひ給はす蓋し其法流布の普からんとを欲し給ひし
J09_0130B34: 故ならんされは和語の讀み易きを以て大事の决し難

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