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J1340 一枚起請但信鈔 隆長 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0114A01: ぜば・深信は信解の前後に通ず・解信ある人・それ
J09_0114A02: を捨て偏に信じ・決定する位をも・深信と名く・喩
J09_0114A03: ば水を求め井をほる人此の土の底に水ありと・人の
J09_0114A04: 云ふを疑はずして土を穿つは深信也・溼泥現前す
J09_0114A05: るを見て・慥に水ありと知るは解信也・溼泥を見
J09_0114A06: て解を生ずるは・唯だ是れ水を信ずるの縁也・既に
J09_0114A07: 溼泥を信じ得ば・解して何の用かあらんやと思ひ・
J09_0114A08: 偏に解信を息めて一心に水を念ずるをも深信と云ふ
J09_0114A09: 也・三心の中の深信は・曾て解信の沙汰にはあらず・
J09_0114A10: 仰信也・佛法は不思議を本とす・但信を要とすべし
J09_0114A11: 信深き人には・今の世にも不思議の事あり・慶安の
J09_0114A12: 比・石淸水八幡宮の神人に・伴與九郞久金と云者あ
J09_0114A13: り・わかき時より神道を好み・吉田の兼見の述作の
J09_0114A14: 書を信仰して常に披見す・ある夜・久金が夢に・齡
J09_0114A15: 五十許なる男の衣冠正しき體なるが手に一卷の書
J09_0114A16: をもち・久金に向つて・我は吉田の兼見也・汝我が
J09_0114A17: 著述の神書を讀むこと日久し我れ甚だ喜ぶ・故に今
J09_0114B18: ま此に來つて對面す・汝に神道の深祕を授くべしと
J09_0114B19: 云ひて手に持てる書を渡せり・久金謹んで頂戴し披
J09_0114B20: き見れば引合せのやうなる紙に・一首の和歌あり・
J09_0114B21: 仰げ猶唯一すぢの神の道の
J09_0114B22: 心にかなふ和歌のうら波
J09_0114B23: 即ち夢はさめぬ・久金嬉しくも有り難くも思ひ翌日
J09_0114B24: 吉田に往いて・兼見の影を申し出し・初て拜見する
J09_0114B25: に肥たる男の顏の少し赤くて片目にて在す・其の形・
J09_0114B26: 夢に見し面影に聊も違はず・其の頃・彈正忠康勝の
J09_0114B27: 朝臣と云ふ人あり・劍術に妙を得たる人也常に神儒
J09_0114B28: 佛の三敎を好み・久金を・神を學ぶの友とし給ふ・
J09_0114B29: 折節二條河原町の旅館に在しけるに・久金吉田よ
J09_0114B30: りの歸りに立寄り・夢の事を具に語る・康勝感心し
J09_0114B31: 給ひ・兼見の影を・畵工狩野氏に命じて寫させ・久
J09_0114B32: 金に賜ふ・賛には・夢想の和歌を・吉田の三位兼里の
J09_0114B33: 卿書き給へり・久金代代領せる・八幡の邊の地に・兼
J09_0114B34: 見の祠を建て・厚く是を敬ふ・康勝朝臣・久金が夢の

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