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J1340 一枚起請但信鈔 隆長 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0110A01: 權敎にまれ實敎にまれ・其の家家に要とする所の深
J09_0110A02: 義には・通じ難かるべし・喩ば沈水栴檀は美じき薰な
J09_0110A03: れとも・其の香を我か鼻に留置て・他の芸を齅くとき
J09_0110A04: は・廬橘のにほひやらん・芝蘭のかほりやらん・
J09_0110A05: わかち難き如くならん・云云
J09_0110A06: 能化に僻見の人あれば・所化皆な是れに隨ふ・一盲衆
J09_0110A07: 盲を引くと云が如し・正見の知識世に出つれば・多
J09_0110A08: の人謬解を改む・日出れば暗去るが如し・一人世間
J09_0110A09: に生ずれは・多人衰惱を得・一人世間に生ずれば・
J09_0110A10: 多人利益を得と・云事あり・始日大師・支那に出給
J09_0110A11: へば・圓頓の光再び輝き・普照國師・此國に來り給
J09_0110A12: へば・達磨宗復た盛んなり・
J09_0110A13: 元和の比・俊正房明忍律師と云人あり・原は舟橋の
J09_0110A14: 何某と云ふて儒門の學生なりき東君の御前にて・儒
J09_0110A15: 書を講ぜし事も度度也・後に僧と成り高雄の心海僧
J09_0110A16: 正と心を合せ久く絶えたる戒律を再興す・此れより
J09_0110A17: 此の國に如法の比丘多くなれり・俊正律師・求法の
J09_0110B18: 爲に・唐に渡らんとて・西國に下り・平戸と云所に
J09_0110B19: て・舟待し居給ふ旅亭にて往生要集を初て披閲し・
J09_0110B20: 稱名の行者と成り・唐しへも渡らす・亦都へも上ら
J09_0110B21: ず・彼の地に留り・明暮念佛し給ふ・臨亡の時・佛
J09_0110B22: 菩薩の來迎・並に極樂の體相を拜見し紙筆を乞うて
J09_0110B23: 書して曰く・畵に書けるは萬分が一・八功德池には・
J09_0110B24: 七寳の蓮花あり・樹林には瑠璃本紙如此の・華菓枝葉等也・
J09_0110B25: 云云・也と云字に至り筆を引棄てて息絶え給へり・
J09_0110B26: 其の眞蹟槇尾西明寺にあり・圓通大師・宋の吳門寺
J09_0110B27: にて・
J09_0110B28: 雲の上に遙に樂の音す也
J09_0110B29: 人やきくらんそら耳かもし
J09_0110B30: と詠んで去給ひしにも・劣るまじき往生也・在世の韋
J09_0110B31: 提・滅後の凡夫・同く攝取の光明を被るといふ心を
J09_0110B32: 圓光上人・
J09_0110B33: 曇り行く人の心の末の世を

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