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J1340 一枚起請但信鈔 隆長 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0109A01: 淨閑悅び・一類の者の屋敷の傍に方丈ばかりなる庵
J09_0109A02: を結んて住みけり・かくて人の爲に雇れありき馬を
J09_0109A03: 追ひ牛を牽き田を耕す業をしけるにも・唯彌陀の名
J09_0109A04: 號を唱へつつぞありける・夜は又佛前に在りて鐘皷
J09_0109A05: を嗚らし・高聲に念佛す・都て二六時中・行住坐臥
J09_0109A06: を論ぜす・偏に稱名の一行をのみ事とせり・或は時
J09_0109A07: 時先非を悔いて涙を流すこと箕輪の入道が如し・僧
J09_0109A08: にもあらず俗にもあらず體にて彼の里に住むこと三
J09_0109A09: 十餘年齡既に六十餘歳になりぬ・ある時宇治橋の邊
J09_0109A10: に高札を立つ宇治田原の淨閑・來年何月幾日・極樂
J09_0109A11: へ往生す・結縁の爲來り給ふべしと書けり親き者ど
J09_0109A12: もこれを制すれども・佛の御告ある上は疑なしとい
J09_0109A13: ひて・曾て聞き入るる事なし・翌年其の日に至りし
J09_0109A14: かば・淨閑が庵の庭に・貴賤雲霞の如く群集し・皆
J09_0109A15: 立ちながら念佛す・淨閑早朝に沐浴し・新淨の衣を
J09_0109A16: 著し佛前に在りて高聲に佛の御名を唱ふ・午の刻に
J09_0109A17: 至りて念佛を迴向し・往生安樂國と唱へて平伏す・良
J09_0109B18: 久く首を擧けざりしを・傍に竝び居たる人近く寄り
J09_0109B19: て見れば・早息絶え居たりしと也・同じ里に宗仲と
J09_0109B20: 云ふ老人のありしが・我れ壯年の時淨閑往生の日・
J09_0109B21: 彼の庵室へ詣てて親り此の事を見侍しと語れり・此
J09_0109B22: の宗仲も專修念佛の行者なりしが・元祿の初・臨終
J09_0109B23: 正念にして終れり・
J09_0109B24: 世に一等の人有りて諸道の昇沈は戒の有無によると
J09_0109B25: 云ふのみを執して・破戒不往生の義を立つ是は善に
J09_0109B26: 似たる邪見也・第十八の願に・往生の機類を定め給
J09_0109B27: ふ時・十方衆生と願ひ給へり・爭でか破戒無戒の人を
J09_0109B28: 棄給ふべき・法照禪師の・不簡多聞持淨戒・不簡破
J09_0109B29: 戒罪根深の釋・如何か會すべき・學者といへども・
J09_0109B30: 本願念佛の一門には・動すれば跌ける事あり・是は
J09_0109B31: 淨敎の文を見るの麤相なると・又は常途の敎相に凖
J09_0109B32: へて推察する故なるべし・若し通途の敎相の如くな
J09_0109B33: らば彌陀の本願に超世の名あるまじくや
J09_0109B34: 或人の云・自宗成立の執を挾んで他の敎文を見ば・

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