浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0109A01: | 淨閑悅び・一類の者の屋敷の傍に方丈ばかりなる庵 |
J09_0109A02: | を結んて住みけり・かくて人の爲に雇れありき馬を |
J09_0109A03: | 追ひ牛を牽き田を耕す業をしけるにも・唯彌陀の名 |
J09_0109A04: | 號を唱へつつぞありける・夜は又佛前に在りて鐘皷 |
J09_0109A05: | を嗚らし・高聲に念佛す・都て二六時中・行住坐臥 |
J09_0109A06: | を論ぜす・偏に稱名の一行をのみ事とせり・或は時 |
J09_0109A07: | 時先非を悔いて涙を流すこと箕輪の入道が如し・僧 |
J09_0109A08: | にもあらず俗にもあらず體にて彼の里に住むこと三 |
J09_0109A09: | 十餘年齡既に六十餘歳になりぬ・ある時宇治橋の邊 |
J09_0109A10: | に高札を立つ宇治田原の淨閑・來年何月幾日・極樂 |
J09_0109A11: | へ往生す・結縁の爲來り給ふべしと書けり親き者ど |
J09_0109A12: | もこれを制すれども・佛の御告ある上は疑なしとい |
J09_0109A13: | ひて・曾て聞き入るる事なし・翌年其の日に至りし |
J09_0109A14: | かば・淨閑が庵の庭に・貴賤雲霞の如く群集し・皆 |
J09_0109A15: | 立ちながら念佛す・淨閑早朝に沐浴し・新淨の衣を |
J09_0109A16: | 著し佛前に在りて高聲に佛の御名を唱ふ・午の刻に |
J09_0109A17: | 至りて念佛を迴向し・往生安樂國と唱へて平伏す・良 |
J09_0109B18: | 久く首を擧けざりしを・傍に竝び居たる人近く寄り |
J09_0109B19: | て見れば・早息絶え居たりしと也・同じ里に宗仲と |
J09_0109B20: | 云ふ老人のありしが・我れ壯年の時淨閑往生の日・ |
J09_0109B21: | 彼の庵室へ詣てて親り此の事を見侍しと語れり・此 |
J09_0109B22: | の宗仲も專修念佛の行者なりしが・元祿の初・臨終 |
J09_0109B23: | 正念にして終れり・ |
J09_0109B24: | 世に一等の人有りて諸道の昇沈は戒の有無によると |
J09_0109B25: | 云ふのみを執して・破戒不往生の義を立つ是は善に |
J09_0109B26: | 似たる邪見也・第十八の願に・往生の機類を定め給 |
J09_0109B27: | ふ時・十方衆生と願ひ給へり・爭でか破戒無戒の人を |
J09_0109B28: | 棄給ふべき・法照禪師の・不簡多聞持淨戒・不簡破 |
J09_0109B29: | 戒罪根深の釋・如何か會すべき・學者といへども・ |
J09_0109B30: | 本願念佛の一門には・動すれば跌ける事あり・是は |
J09_0109B31: | 淨敎の文を見るの麤相なると・又は常途の敎相に凖 |
J09_0109B32: | へて推察する故なるべし・若し通途の敎相の如くな |
J09_0109B33: | らば彌陀の本願に超世の名あるまじくや |
J09_0109B34: | 或人の云・自宗成立の執を挾んで他の敎文を見ば・ |