浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0032A01: | かねて命期をも知りぬれは。心つねに歡喜して。死を |
J09_0032A02: | 待こと歸るが如くに悅び身心なにの憂もなく。二世 |
J09_0032A03: | 安樂の身となるらん事。たれの行者か。こひ願はざら |
J09_0032A04: | んや。又たとひ。佛の瑞告をばかうふらずとも。行 |
J09_0032A05: | 者常に自ら我身をかへりみよ。三垢も消滅し。身意 |
J09_0032A06: | も柔輭になりて。その心自然に十惡と相應せざる樣 |
J09_0032A07: | に。なりぬと覺えなば。これぞ滅罪業成の驗なるらん |
J09_0032A08: | と。心の中には悅びて。口にはあへて語るべからず。 |
J09_0032A09: | たれたれも晝夜六時の強發願こそ難からめ。もし眞 |
J09_0032A10: | 實に業成の靈驗を。心の的にかけなん人は。二時三 |
J09_0032A11: | 時の勤行の節などには。をのづから歡喜心もをこり。 |
J09_0032A12: | 勇猛心も涌出て。線香一炷が程などは。一心合掌を |
J09_0032A13: | 亂さず。高聲念佛を相續せん事。難かるべきにあら |
J09_0032A14: | ねど。大方念佛の靈驗をば。臨終の事とのみ思やり |
J09_0032A15: | て今日を勵む人まれなり。臨終と思ふが惡きにはあ |
J09_0032A16: | らねど。凡心の癖にて人を見るも。我心にも。臨終と |
J09_0032A17: | だにもいへば。はるかに百年の後ぞと思ひゆるみて。 |
J09_0032B18: | きのふ。けふとは。誰も思はざるゆへに。平生の |
J09_0032B19: | 念佛か。等閑かちにのみ。なりゆきて。強發願の心 |
J09_0032B20: | もなければ。また業還成の靈驗をも感じえざる事。 |
J09_0032B21: | いと悲しからずや。ことさら今時の衆生は根性ます |
J09_0032B22: | ます落ちくだりて。十惡に取むかふ時は。氣もいさ |
J09_0032B23: | み。念佛を行ずる時は。心ものうく。たまたま申す佛 |
J09_0032B24: | 前の稱名なども。公役の樣にのみ。なりかちなり。そ |
J09_0032B25: | れとても。分分に滅罪の功德は有るべけれど。寒夜の |
J09_0032B26: | 堅冰に湯をそそぐ譬の如くなれば。いく度か流轉の |
J09_0032B27: | 絆を。切ては結び。切てはまた結ぬべし。かくては。 |
J09_0032B28: | いつの日に。いつたぐり。はつべしとも。見えされ |
J09_0032B29: | ば。大方平生の内には。業成の靈驗の感得せん事か |
J09_0032B30: | たかるべきぞ口惜き。されども。一期の間。願行相 |
J09_0032B31: | 續して。稱名退轉なくは。百年報滿の暮には。必ず正 |
J09_0032B32: | 念現前し。聖衆來迎し玉はん。この時にこそ。百年の |
J09_0032B33: | 業にも勝たる。臨終一念の見佛の功德によりて。餘殘 |
J09_0032B34: | の罪障もみな消えて。めでたく歡喜往生を遂ぐべし。 |