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J1320 吉水遺誓諺論 忍澂 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0032A01: かねて命期をも知りぬれは。心つねに歡喜して。死を
J09_0032A02: 待こと歸るが如くに悅び身心なにの憂もなく。二世
J09_0032A03: 安樂の身となるらん事。たれの行者か。こひ願はざら
J09_0032A04: んや。又たとひ。佛の瑞告をばかうふらずとも。行
J09_0032A05: 者常に自ら我身をかへりみよ。三垢も消滅し。身意
J09_0032A06: も柔輭になりて。その心自然に十惡と相應せざる樣
J09_0032A07: に。なりぬと覺えなば。これぞ滅罪業成の驗なるらん
J09_0032A08: と。心の中には悅びて。口にはあへて語るべからず。
J09_0032A09: たれたれも晝夜六時の強發願こそ難からめ。もし眞
J09_0032A10: 實に業成の靈驗を。心の的にかけなん人は。二時三
J09_0032A11: 時の勤行の節などには。をのづから歡喜心もをこり。
J09_0032A12: 勇猛心も涌出て。線香一炷が程などは。一心合掌を
J09_0032A13: 亂さず。高聲念佛を相續せん事。難かるべきにあら
J09_0032A14: ねど。大方念佛の靈驗をば。臨終の事とのみ思やり
J09_0032A15: て今日を勵む人まれなり。臨終と思ふが惡きにはあ
J09_0032A16: らねど。凡心の癖にて人を見るも。我心にも。臨終と
J09_0032A17: だにもいへば。はるかに百年の後ぞと思ひゆるみて。
J09_0032B18: きのふ。けふとは。誰も思はざるゆへに。平生の
J09_0032B19: 念佛か。等閑かちにのみ。なりゆきて。強發願の心
J09_0032B20: もなければ。また業還成の靈驗をも感じえざる事。
J09_0032B21: いと悲しからずや。ことさら今時の衆生は根性ます
J09_0032B22: ます落ちくだりて。十惡に取むかふ時は。氣もいさ
J09_0032B23: み。念佛を行ずる時は。心ものうく。たまたま申す佛
J09_0032B24: 前の稱名なども。公役の樣にのみ。なりかちなり。そ
J09_0032B25: れとても。分分に滅罪の功德は有るべけれど。寒夜の
J09_0032B26: 堅冰に湯をそそぐ譬の如くなれば。いく度か流轉の
J09_0032B27: 絆を。切ては結び。切てはまた結ぬべし。かくては。
J09_0032B28: いつの日に。いつたぐり。はつべしとも。見えされ
J09_0032B29: ば。大方平生の内には。業成の靈驗の感得せん事か
J09_0032B30: たかるべきぞ口惜き。されども。一期の間。願行相
J09_0032B31: 續して。稱名退轉なくは。百年報滿の暮には。必ず正
J09_0032B32: 念現前し。聖衆來迎し玉はん。この時にこそ。百年の
J09_0032B33: 業にも勝たる。臨終一念の見佛の功德によりて。餘殘
J09_0032B34: の罪障もみな消えて。めでたく歡喜往生を遂ぐべし。

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