ウィンドウを閉じる

J1320 吉水遺誓諺論 忍澂 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0017A01: の便に備へよと。時に余答て曰く誠に然なり。さり
J09_0017A02: ながら世の人智あるも愚なるも。一枚起請とだにも
J09_0017A03: 聞けば。やがて念佛の安心を示し玉へる。吾大師の御
J09_0017A04: 遺誡なりと知らざるはなし。これによりて。通題その
J09_0017A05: まま別題とはなれり。これ得たる者は別稱を呼ばず。
J09_0017A06: と云ふに叶ひて。いよいよ大師の御遺德を顯すなら
J09_0017A07: ん。されば古より。宸翰を始め。公卿門跡他宗の高僧
J09_0017A08: たちまで。數多此文を書せ玉ふを見侍るに。みな一枚
J09_0017A09: 起請と題して。更にその名を改め玉はず。然ればただ
J09_0017A10: 世の久しき相傳を守りて。一枚起請と呼んにはしか
J09_0017A11: じ。但し講談の便に。しいて總標の題號を義立せよ
J09_0017A12: とならば。
J09_0017A13: 吉水遺誓と題しなば。打聞より。吾大師の。末期の。
J09_0017A14: 起請文。なりとは知らるべし。もし何事に書かせ玉へ
J09_0017A15: る起請文ぞやとなを總標を題せよとならば具さに念
J09_0017A16: 佛往生吉水遺誓と題しなば。殘る所あるまじくや。
J09_0017A17: これまた私の義にあらず。本より大師の御心なるべ
J09_0017B18: し。その故は。大師かねて鎭西上人に付囑し玉へる。
J09_0017B19: この本文には。發端の詞に。念佛往生と申す事はもろ
J09_0017B20: こし我朝等。と書下し玉へばなり。誠に遺誓一編は。
J09_0017B21: ただ念佛往生の安心起行を示し玉へば。此一句ふか
J09_0017B22: く題目にかなへり。况や念佛往生と云へは正しく第
J09_0017B23: 十八願の題目なるをや。又玄義には。念佛を宗とし。
J09_0017B24: 往生を體とす。と釋し玉へば。此一句は淨土三經の
J09_0017B25: 宗體なり。されば選擇集の題下には。往生之業念佛爲
J09_0017B26: 先と標じて。選擇一部の落著は。ただ念佛往生の一句
J09_0017B27: に極まる事を示し玉へり。然にこの念佛往生の一句
J09_0017B28: を他宗の學者は。觀念理持の念佛に混亂し。背宗の贋
J09_0017B29: 徒は。領解歸命の念佛に僞亂せり。しかのみならず。
J09_0017B30: 願行相續稱名の念佛をば。吉水方便の御勸化にして。
J09_0017B31: 眞實の御本意にはあらずと訇りて。上大師を誣ひた
J09_0017B32: てまつり。下男女を惑はせり。これらの邪義を。なが
J09_0017B33: く滅後末代に防ぎて。彌陀本願の正義をあらはし玉
J09_0017B34: はんための御遺誓なれば。念佛往生の題目。その髓を

ウィンドウを閉じる