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浄土教之研究

提供: 新纂浄土宗大辞典

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じょうどきょうのけんきゅう/浄土教之研究

望月信亨著。雑誌『宗粋』、および雑誌『宗教界』に投稿した合計五四稿の論文をまとめた書。大正三年(一九一四)一一月、仏書研究会刊。さらに同一一年に初版に論文を一二稿追加して第二版を、昭和五年(一九三〇)に第三版を、いずれも金尾文淵堂から刊行している。また同五二年に日本図書センターから第三版の複製が刊行されている。著者の浄土教研究の業績を一冊にまとめたもの。内容は、序論で経典成立史に関する自説を提示し、第一論文から第一三論文までが浄土経典に関するもの、第一四論文から第一八論文がインド浄土教、第一九と第二〇論文が兜率上生に関するもの、第二一論文から第三三論文が中国浄土教、第三四論文から第五四論文が日本浄土教となっている。また第二版で追加された一二稿は、第一論文が善導、第二論文が法照、第三論文から第一二論文が日本浄土教の内容となっている。本書所収の個々の論文が基礎となって、後の著作が成立しており、著者が早い時期から自らの研究方法を確立していたことを如実に語る研究書でもある。浄土教研究における本書の成果として特筆すべき点は多々あるが、たとえば第七論文・第八論文などは、大乗経典全体の中から阿弥陀仏四十八願の興起の成立過程を導こうとする内容であり、研究方法も研究成果も現在まで大きな影響を与えているものである。また全六六論文中、一六稿が法然に関する内容であり、著者が法然浄土教の解明に尽力していたことを物語る一冊である。


【執筆者:柴田泰山】