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虫回向文

提供: 新纂浄土宗大辞典

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むしえこうもん/虫回向文

虫の類にいたるまでを対象とした回向文。「天人しょてんにんみん 蠕動之類ねんどうしるい 皆蒙慈恩かいむじおん 解脱憂苦げだつうく」。『無量寿経』(聖典一・九八/浄全一・二六)に出る。『諸回向宝鑑』二(二七ウ)に二種載せるうちの一つで『浄土苾蒭びっしゅ宝庫』下(四六ウ)に受け継がれた。ただし「ねん」を『諸回向宝鑑』では「なん」、『浄土苾蒭宝庫』では「軟」に作る。諸天、人間から虫類に至るまでみな仏の慈恩を受け、憂い苦しみから解放されるの意。地鎮式において、角塔婆の左面、あるいは二基の板塔婆のうち、「天下和順」の下四句と共にこの文を書くが、実際に唱える指示はない。この塔婆の書式には、「建立中無諸障礙並殉難横死異類得脱」(『蓮門小子の枝折』一二八頁、浄土宗、一九七一)、「汝等異類解脱幽途超生善趣」(『写真図解浄土宗の行儀』浄土宗東京教区教務所、一九七四)などの諸説がある。


【執筆者:巖谷勝正】