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般若心経

提供: 新纂浄土宗大辞典

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はんにゃしんぎょう/般若心経

一巻。具名は『摩訶般若波羅蜜多心経』。略して『般若多心経』『心経』とも称される。唐・玄奘訳。サンスクリット本の原名はⓈPrajñāpāramitā-hṛdaya-sūtraといい、大本(広本)と小本(略本)の二系統が伝存し、チベット訳本などもそなわるが、近年インド撰述を疑問視する学者もいる。玄奘訳は小本系に相当する。古来、玄奘訳がもっとも広く流布しているが、漢訳には大小・広略両系統の合計七訳が現存し、俗に「七種心経」と称する。現存最古訳は、小本系の姚秦鳩摩羅什訳『摩訶般若波羅蜜大明呪経』一巻で、玄奘訳の現行流布本に対して、旧訳の経文を伝える貴重な異訳本である。ほかに、『唐梵翻対字音般若波羅蜜多心経』一巻があるが、これは『梵本般若波羅蜜多心経』と別称するように、いわゆるサンスクリット語の経文を漢字の音を利用して写したものであり、還元すれば小本のサンスクリット本の経文となる。『般若心経』は三〇〇字にも満たない簡潔な経典である。日常の勤行写経に好便で、今日もっともよく親しまれている経文を提供している。「釈迦に心経」といえば、「釈迦に経」「釈迦説法」と同様で、まさに『般若心経』は仏法・仏典を代表する。経題の中の心(Ⓢhṛdaya)とは、心臓のことで、物事の核心・心髄ということである。つまり経題は、般若波羅蜜多の核心を説く経典という意味である。『般若心経』は、厖大な般若経典類に説かれる般若智慧の教えやそのとらわれのないあり方を空思想に凝縮して、覚りの彼岸への到達成就を般若の明呪・真言によって説き明かしている。もとより、その理解の仕方、信仰のすすめ方もさまざまであるが、浄土宗では食作法じきさほう祈願に本経を用いる。


【参照項目】➡般若経


【執筆者:勝崎裕彦】