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聞名得益偈

提供: 新纂浄土宗大辞典

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もんみょうとくやくげ/聞名得益偈

在家者の追善のための回向文として、読経に続いて唱えられる偈文。「其仏本願力ごぶつほんがんりき 聞名往生もんみょうよくおうじょう 皆悉到彼国かいしっとうひこく 自致不退転じちふたいてん」。出典は『無量寿経』下の「東方偈」(「讃重偈」聖典一・七六/浄全一・二一)。「その仏の本願の力、名を聞きて往生せんと欲すれば、皆悉くかの国に到って、おのずから不退転に致る」(聖典一・二五三)と訓読される。偈文名にあるとおり、本偈は阿弥陀仏聞名利益を明かす。阿弥陀仏名号を聞き、往生を願ったなら、阿弥陀仏本願力で誰しも極楽往生でき、自動的に不退転の位に住するという意味である。ただし、サンスクリット本では「これは私の本願であった。〈私の名を聞いた者は必ず往生できるように〉と。…〔往生した者は〕不退転になる」という趣旨であって、第一句目がサンスクリット本と漢訳とでかなり異なる。漢訳『無量寿経』では「その仏の本願の力」と訳されたため、意味が取りづらくなっているといえよう。ちなみに、『無量寿経』以外の漢訳で唯一これと対応する箇所を有する『平等覚経』では、サンスクリット本とほぼ同趣旨となっている。なお、浄土宗としては「聞名往生」は「聞名して念仏往生を願えば」と受け取るべきであろう。また、「不退転」の解釈に関し、義山は『無量寿経随聞講録』(浄全一四・四一六上)で、凡夫は「処不退」、聖人は「位不退」と説く。


【参照項目】➡回向文聞名阿鞞跋致


【執筆者:安達俊英】