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「浄土宗要集」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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2018年3月30日 (金) 06:25時点における最新版

じょうどしゅうようしゅう/浄土宗要集

六巻。聖光述。良忠の同名書と区別するため『鎮西宗要』『西宗要』とも呼ばれる。嘉禎三年(一二三七)の成立。本書の奥書に「嘉禎三年(丁酉)四月二十日午剋終ぬ。天福寺に於て功終ぬ。御口筆なり。但し草案なれば文体狼籍なり。後に書き直す可し。同聞衆は、専阿、持願房、敬蓮社、信称房、執筆然阿」(浄全一〇・二四二下)とあることから、聖光が筑後天福寺(福岡県八女市)で行った講義を聴衆であった良忠が書きとめることで成立した文献とされる。講説が行われた期間については、同書の鎌倉光明寺蔵写本や『鎮西宗要本末口伝鈔』の題下に「嘉禎三(丁酉)年正月十八日り始まり、同四月廿日に至りて終ぬ。天福寺に於て功終りおわんぬ」(浄全一〇・三二二下)とあり、一月一八日に開始されたと記されている。内容は、所依経論、浄土三部経に関する諸問題、往生に関する心と行、三種行儀念仏行者のあり方等の名目を八〇項目にわたって講説しており、聖光の著作の中でも最も大部で、他の著作には見られない説示がその大半をしめる。また、成立が最晩年であることから聖光の教学の集大成と見なし得る著作である。講演録であることからも、その文体は漢文の文法の不備や漢文と仮名の文が交じり合う部分や、口語体で記された部分などが多く見られる。「浄土三部経」を所依とし、これらが善導によって選び出されたという主張にはじまり、自宗を「善導宗」と各所で呼称するなど、法然浄土教善導の教説を根底として成立していることが特に主張されている。その他、臨終行儀のあり方を細かく示したり、往生に対する疑心を厳しく戒めるなど、聖光独自の説示として注目すべきことも少なからず見られる。末書に良忠の『浄土宗要集聴書』をはじめ『鎮西宗要本末口伝鈔』『重書無題鈔』(いずれも浄全一〇)などがある。


【所収】浄全一〇、日蔵九〇


【参考】深貝慈孝「鎮西教学の特徴—『浄土宗要集』を中心として—」(『仏教文化研究』二九、一九八四)、小西存祐「鎮西国師について」(『三上人の研究』三上人遠忌記念出版会、一九三五)


【執筆者:郡嶋昭示】


五巻。良忠述。聖光浄土宗要集』に対して、『東宗要』『鎌倉宗要』などとも呼ばれる。詳細な成立時期は不明だが、弘安五年(一二八二)一二月から同九年九月までの間で、『浄土宗要肝心集』の後の成立と考えられる。本書は善導観経疏』における浄土宗義上の重要問題を二四箇条とりあげ、聖光相伝の説によって解説したもの。撰述の由来は良忠弟子である然空良空の懇請によるものとされ、著述の目的は法然門下の異義が続出し、鎮西の正義をもって決断するためであるとされる。その内容である二四箇条の論題は以下の通りである。〔第一巻〕①諸伝に載せるところの善導はいずれの師が今家にあたるや、②各発無上心とは菩提心とやせん、三心とやせんや、③なにゆえぞ今経を菩薩頓教一乗と名づくるや、④なにをか要門弘願と名づくるや、⑤今経の題目の観は定散に通ずるや、⑥成仏往生との二種別時意、その行相いかん、⑦宗の意極楽世界は報化二土の中にはいずれぞ。〔第二巻〕⑧宗の意凡夫報土を許すや、⑨念仏の外の余善を以て生因本願の行というべきや。〔第三巻〕⑩宗の意諸行はおのおの報土に生ずと許すや、⑪九品辺地ともに報土の摂なるべきや、⑫一切の往生人は必ず宿善によるべきや、⑬摂取の光明は余行の者を摂すべきや、⑭なにをか正因正行と名づくるや、⑮なんらをか十一門義と名づくるや。〔第四巻〕⑯三心の名義いかん、⑰念仏行者必ず四修の法を行用すべきや。〔第五巻〕⑱専雑二修と正雑二行と同とやせん異とやせん、⑲なにをか受法不同と名づくるや、⑳宗の意中下品の人の菩提心を具すと許すや、㉑浄土の教門は出世の本懐なりと許すべきや、㉒五逆の罪人の十念満ぜずして往生すべきや、㉓三経説時の前後いかん、㉔付属流通は定散に通ずるや。このうち⑤⑬㉒㉔の四箇条は論題のみを出して『伝通記』『決疑鈔』の釈義に譲っている。また成立年代については妙瑞浄土宗玄談』には古来の説として二説示されているが、本集本文中に「安楽集記の如し」と弘安五年一二月に撰述された『安楽集私記』の名があることから、それ以降と考えられ、また遅くとも良忠が鎌倉へ下向する以前とされる。本書には異本として『浄土宗要肝心集』があり、これを草稿本とし、また『伝通記』『決疑鈔』を土台として著述されている。刊本には寛永一〇年(一六三三)版、同一二年版、慶安四年(一六五一)版、文政二年(一八一九)版がある。注釈書として、作者不明『浄土宗見聞』五巻、良栄理本浄土宗要集見聞』一〇巻、妙瑞東宗要講録』(『東宗要備講』)八巻がある。なお妙瑞東宗要講録』には大意の項を別行した『浄土宗要集玄談』がある。


【所収】浄全一一


【資料】妙瑞『浄土宗要玄談』


【参考】石橋誡道「東宗要に就て」(『摩訶衍』一四、一九三四)、廣川堯敏「良忠述『浄土宗要集』の成立をめぐる諸問題(一)」(浄土学三六、一九八五)、同「良忠述『浄土宗要集』の成立をめぐる諸問題(二)」(『良忠上人研究』大本山光明寺、一九八六)


【参照項目】➡浄土宗要肝心集


【執筆者:沼倉雄人】


三巻。顕意けんに撰。西山深草派祖立信門下の然空(一二三六—一二八二)が弘安四年(一二八一)西山往生院においてまとめた論題に、然空没後の同七年同門の顕意が回答を付したもの。浄土宗義を機(巻上)・行(巻中)・身土・雑(巻下)の四分野に分け、大綱四八箇条と細目四三二箇条、合計四八〇箇条にわたって論じた問答集。聖光良忠の同名書と区別して『西山宗要』と呼ばれる。貞享三年(一六八六)版、明治一一年(一八七八)版がある。


【所収】正蔵八三


【執筆者:稲田廣演】