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天地此界

提供: 新纂浄土宗大辞典

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てんちしかい/天地此界

祖山声明の一つ。「散華さんげ」の中段で唱える。釈迦散華ともいう。「天地此界多聞室てんじしかいたもんしつ 逝宮天処十方ぜいぐうてんしょじっぽうむ 丈夫午王大沙門じょうぶごおうだいしゃもん 尋地山林遍無等じんじせんりんへんむとう」。この偈は『婆沙論』(正蔵二七・八九〇中)『俱舎論』(正蔵二九・九五中)を典拠とする。散華は上段に「願我在道場がんがざいどうじょう 香華供養仏」、中段に「天地此界多聞室 逝宮天処十方無 丈夫午王大沙門 尋地山林遍無等 香華供養仏」、下段に「願以此功徳がんにしくとく 普及於一切ふぎゅうおいっさい 我等与衆生がとうよしゅじょう 皆共成仏道かいぐじょうぶつどう 香華供養こうけくようふ」と唱え、中段は本尊によって代えられる。この偈は釈尊本生譚で、「仏というものは天地・此の界・多聞天の室・梵天の逝宮・帝釈の天処・十方にも無し。丈夫午王の大沙門である仏は地・山林を尋ぬるも遍く等しいもの無し」と讃歎した偈である。


【参照項目】➡散華


【執筆者:大澤亮我】


散華さんげ」の中段の曲。『俱舎論』一八の「天地此界多聞室てんちしかいたもんしつ 逝宮天処十方ぜいぐうてんしょじっぽうむ」(正蔵二九・九五中)の偈に「香華供養仏」を継いで唱える。中段は「釈迦散華」と呼ばれ、始段唄が引かれたときに唱えられるが、増上寺では通常「願我在道場 香華供養仏」の初段のみを唱えている。壱越いちこつ調(基音D音)・出音徴しゅっとんちの曲で、「三段上り」「シャクリ押」などの高度な技巧を用いる難曲の一つ。


【参考】『縁山声明集』(増上寺、一九八九)


【参照項目】➡散華


【執筆者:廣本榮康】