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浄土生無生論

提供: 新纂浄土宗大辞典

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じょうどしょうむしょうろん/浄土生無生論

一巻。明・伝灯撰。万暦三一年(一六〇三)成立。本書は天台の一心三観三諦円融、性具善悪思想と華厳の性具十法界楞伽りょうが如来蔵思想に基づき、浄土教義を述べるものである。本文は十門に分かれる。まず、①一真法界門では、一真法界とは衆生の本来的な心性で、その心性は無量の徳を備え、無量の名を受けるという。②身土縁起門では、その一真法界性は不変であるけれど、縁に従って変化するという。三身および四土も悉く心より変造されたものであるという。③心土相即門では、安楽浄土はここから十万億の国土を離れるが、わが心にも存在するという。④生仏不二門では、阿弥陀凡夫とは覚りの違いがあるけれど、その心は全く同じであるという。⑤法界為念門では、法界円融体が私心であるので、私が念仏する心の法界であると説く。⑥境観相吞門では、『観経』では理と事の二種観があり、お互いに補い合っていると述べる。⑦三観法爾門では、能観を三観となし、所観を三諦となすと説く。⑧感応任運門では、心は諸仏を感ずれば、弥陀は応じる。ちょうど磁石のようであるという。⑨彼此恒一門では、臨終のときにもし正念を失わなければ、もしくは光や華を見ることができたなら、往生して宝池に生まれるという。⑩現未互在門では、行者は今念仏すれば、因の中にすでに果があって、花を開くことになると結ぶ。本書は智旭によって『浄土十要』の第九要として収録されている。注釈書として正寂『浄土生無生論注』一巻(一六一二)、受教『浄土生無生論親聞記』二巻(一六二六)、達黙『浄土生無生論会集』一巻(一八四九)などが存する。


【所収】正蔵四七


【参考】望月信亨『中国浄土教理史』(法蔵館、一九四二)、『仏光大辞典』(仏光出版社、一九八八)


【参照項目】➡浄土十要


【執筆者:肖越】