紀元前一二世紀頃、イラン高原北方におこったゾロアスター教(拝火教)の神官たちによって口承されていた祭詞や諸規定などが、三世紀頃に編纂され書物の形になった聖典。忠実に伝承されたその言語もアヴェスター語と呼ばれ、一部はインド最古の文献『リグ・ヴェーダ』より古く、すなわちインド・ヨーロッパ語族のイラン語派とインド語派への分派以前の様相を伝える。インドの宗教史研究のうえでもきわめて重要な文献である。
【執筆者:水野善文】