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「縁起論・実相論」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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2018年3月30日 (金) 06:20時点における最新版

えんぎろん・じっそうろん/縁起論・実相論

一切のものの真のありかたを示す仏教教理の二体系。縁起論は、すべての事象は因縁果によって生成変化する時間的立場から示され、実相論はすべてのものの真実のありのままのありかたを示した空間的立場から示される体系である。初期大乗においては、縁起するすべてのものの本質は空であり、無相の故に執着を離れるべきことが示され、中観派の龍樹は無自性空を説いた。また瑜伽唯識派では、すべての現象を識の転変と理解し、ただ識のみがあるとする。実相論系では初期仏教の我空法有論、人法二空論に始まり次第に有空中道論、無相皆空論、諸法実相論などが展開する。縁起論系では業感縁起論をはじめ頼耶らや縁起論、真如縁起論、如来蔵縁起論、法界縁起論、六大縁起論などが展開する。縁起論と実相論の二体系はインドの二大思潮と深く関わるようであるが、これが明確な形になるのは中国においてであり、とくに天台思想と華厳思想の間で展開する。天台思想は『法華経』にもとづき諸法実相の理を己心のうちに証得することを説き、現象差別の縁起世界から一実中道の理を証得する、いわば事から理への展開を特色とする。これに対して『起信論』を導入した唐代の華厳思想は『華厳経』の「若し人、三世一切仏を了知せんと欲すれば、応に法界の性、一切は唯だ心の造なりと観ずべし」(正蔵一〇・一〇二上~中)によって唯心論を展開し、現象差別の随縁の世界は絶対の理が心による縁に従って現れた世界であるとし、いわば理から事への性起思想の展開を特色とする。これを受けた唐宋代の天台家は華厳思想と同様に『起信論』を導入し「心外無別法」を徹底させて、観心にもとづく心性の問題として展開する。またこれらの思想を受けて、仏を心の外にみるか心の内なる仏とみるかという論争も展開することとなる。しかし結局、縁起論と実相論は対立の構造をみせながらも万法の真のありかたを究明する見かたの異なりであって対立するものではないのである。


【参照項目】➡縁起実相


【執筆者:福𠩤隆善】