鬼剣舞
提供: 新纂浄土宗大辞典
おにけんばい/鬼剣舞
岩手県北上市を中心として行われる、鬼の面をつけ太刀を振りかざして舞う剣舞。大地を踏みしめる修験道の呪法である反閇による悪魔退散、念仏による衆生救済の意味を持つとされ、鬼面は鬼ではなく仏が明王の姿をして現れたものとされる。かつては門付けをして家々を巡り、悪魔退散、延命長寿、五穀豊穣の祈禱と先祖供養の念仏回向をして回った。由来は諸説あるが、大宝年間(七〇一—七〇四)、修験道の祖である役小角が大峰山での苦行成就の夕暮れに踊った念仏踊りに始まるとも、大同三年(八〇九)に羽黒山の権大僧都善行院が大日如来の化身から悪魔退散、衆生済度の念仏踊りとして伝えられたことに始まるともいう。踊り手は八人が基本であるが、演目により一人から八人と様々である。衣装は、頭に馬の毛や鶏の羽で出来た毛采を付け面をかぶり、平口袖の身ごろに胸当て、広口袴をつけて脇差を差し、手には扇、金剛杵を持つ。曲目により踊り方は様々であり、念仏にあわせ緩やかに踊るもの、太刀を振りながら激しく踊るもの、反閇を踏み悪霊を払うもの、宙返りをいれるなど余興的な要素が多いもの、などがある。国重要無形民俗文化財指定。
【参考】佛教大学民間念仏研究会編『民間念仏信仰の研究 資料編』(隆文館、一九六六)、粒針修『わがみちのく郷土芸能—早池峰神楽・鹿踊・鬼剣舞—』(錦正社、一九九九)
【執筆者:名和清隆】