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摂大乗論

提供: 新纂浄土宗大辞典

しょうだいじょうろん/摂大乗論

二巻本と三巻本がある。無著(ⓈAsaṅga)造。四~五世紀頃の成立とみられる。ⓈMahāyāna-saṃgrahaⓉTheg pa chen po bsdud pa(東北四〇四八、大谷五五四九)。漢訳には仏陀扇多訳(二巻)、真諦訳(三巻)、玄奘訳(三巻)などがある。本書は唯識学派の初期文献とされ、内容は①阿頼耶識あらやしき三性唯識性④六波羅蜜菩薩の十地⑥増上戒学⑦増上心学⑧増上慧学⑨無住涅槃三身、以上の一〇種についてまとめられる。注釈としては、世親と無性によるものがあり、世親釈は玄奘訳・真諦訳・笈多共行矩等訳があり、無性釈は玄奘が訳している。この中で笈多共行矩等訳の世親釈からも『摂大乗論』の本文を取り出すことができる。さらに漢訳に関しては、真諦訳によって摂論宗通論家)が成立し、玄奘訳は法相宗の基本テキストの一つとなった。また真諦の訳出は本書を中国に根付かせ、そこに説かれる別時意説が浄土教を批判する根拠として用いられた。


【所収】正蔵三一


【資料】Étienne Lamotte: Lasomme du grand véhicule d’Asaṅga, Louvain, 1938


【参考】長尾雅人『摂大乗論 和訳と注解』上・下(講談社、一九八二)


【参照項目】➡阿頼耶識三性・三無性摂論宗


【執筆者:石田一裕】