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手次状

提供: 新纂浄土宗大辞典

てつぎじょう/手次状

土地等を譲り渡したときにそれが確かに譲渡されたことを証明するために作成される書状。また、教説を門弟等に対して確かに伝え終わったことを証明するもの。浄土宗では専ら『授手印』に記される聖光の「念仏往生浄土宗血脈相伝手次の事」(聖典五・二四一)を指す。内容は後白河法皇が崩御した際に善知識によって念仏の教説を伝えられたこと、後白河法皇崩御の後、一三年目の御遠忌に際して蓮華王院において追善六時礼讃、「浄土三部経」の読誦を厳修したこと、そしてこのことでこれ以降の花洛(京都)の人々が浄土宗教義にのっとって追善することになったとの歴史が記され、これに続いて法然浄土教教義弟子聖光相伝したこと、そして聖光法然の教説と聖光の私説を『徹選択集』にまとめて良忠に伝えたことを記し、この教説を信じ、念仏行を行じて往生を遂げるべきであるとし、最後に「って秘法を録するの状、手次を以てす。于時嘉禎第三歳八月一日 法然上人口決沙門弁阿」(聖典五・二四二)としてまとめられている。聖光が確かに法然からその教義を受け、そしてそれを良忠に確かに伝えたという「手次」を証明したものである。後白河法皇の件については疑問を呈する説もある。『授手印』の諸写本の中でも、この文があるものとないものが伝わっている。


【参考】阿川文正「浄土宗伝法史の研究(其の二)—『手次状』私考—」(『仏教論叢』一三、一九七九)、同『聖光上人伝と〈末代念仏授手印〉』(大本山善導寺、二〇〇二)


【参照項目】➡璽書末代念仏授手印


【執筆者:郡嶋昭示】