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阿弥陀経義記

提供: 新纂浄土宗大辞典

あみだきょうぎき/阿弥陀経義記

一巻。伝智顗撰。『阿弥陀経』の注釈書。序文に続いて経題を釈名・弁体・宗致・力用・教相の五重に要約して解説し、続けて本文を解釈する。阿弥陀仏を有量の仏とし、極楽凡聖同居土ぼんしょうどうごどと捉え、用心の厚薄が往生の可否を決定すると説く。最澄の『台州録』に「阿弥陀経疏 一巻 智者大師出 五紙」と、本書と考えられる書名が見られ、源信も『阿弥陀経略記』の中で参照しており、日本では古くから存在していたことが分かる。また、朝鮮でも高麗の『義天録』に本書の名が見られる。しかしながら、中国では唐代においてこの書が存在したという記録がなく、宋代に奉先寺源清が、この書を含む当時中国で見ることのできなかった書物を中国に送るよう日本に要請している。その後、中国にもたらされたが、この書をめぐり、趙宋天台の山家派と山外派で智顗撰述の真偽についてまったく意見を異にした。山家派の遵式が真撰説を唱えたのに対し、山外派智円などは「倭人之仮託」として偽撰を主張した。その後はほとんど論議されることもなかったが、現代の研究では偽撰の可能性が高いとされている。


【所収】浄全五、正蔵三七、続蔵二二


【参考】佐藤哲英『天台大師の研究』(百華苑、一九六一)


【執筆者:横田善教】