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針供養

提供: 新纂浄土宗大辞典

はりくよう/針供養

二月八日、一二月八日の「コト八日」と呼ばれる日のどちらか、あるいは両日に行われる、折れた針を豆腐やコンニャクに刺して供養する行事。女性を中心に、近所同士や和裁・洋裁学校単位などで集会所祠堂、社寺などに集まり行われる。この日には女性は裁縫を休み、皆で飲食をして過ごす特別な日でもあった。この針供養は、淡島あわしま神社への信仰と関係が深いとされ、針を淡島神社に納めるという地域もある。淡島神社には針供養との結びつきについて二つの伝承があり、一つは淡島神社の祭神である少彦名命すくなひこなのみことが裁縫の道を初めて教えた神であるという伝承である。もう一つは、淡島神社の祭神が女性の救済神である婆利才女はりさいじょであり、その名前の一部である「ハリ」にちなみ針供養に結びついたというものである。なお、東京では浅草の浅草寺、世田谷の森巌寺、新宿の正受院針供養が有名であるが、浅草寺と森巌寺は淡島神社への信仰に由来するものであり、正受院針供養奪衣婆だつえば信仰から発達したものである。


【参考】長沢利明「針供養と奪衣婆—東京都新宿区・正受院—」(『西郊民俗』一二四、西郊民俗談話会、一九八八)、同「浅草の針供養—東京都台東区浅草淡島堂—千葉県立中央博物館」(『日本民俗学』一七八、日本民俗学会、一九八九)、島立理子「針供養の変容と裁縫を教える場の終焉—千葉県佐原の事例から—」(『千葉県立中央博物館研究報告—人文科学—』一七、千葉県立中央博物館、二〇〇四)


【参照項目】➡淡島信仰


【執筆者:名和清隆】