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肉食妻帯

提供: 新纂浄土宗大辞典

にくじきさいたい/肉食妻帯

鳥・獣・魚等の肉を食することと妻を持つことの並称で、持妻食肉、蓄妻噉肉などともいう。古来、出家者か否かの判断基準として語られる表現であり、『翼賛』には「古しえの入道といえるはみな妻子をすて肉食をたち円戒などをうけて法衣を着したる実の出家なるをいえり。今の在家禅門の肉食妻帯なるを入道と称するには異なれり」(浄全一六・六〇三上)とある。出家者の肉食妻帯は戒により禁じられるところであり、『梵網経』においては、肉食は十重禁戒の第一殺戒あるいは四十八軽戒しじゅうはっきょうかいの第三食肉戒に、妻帯は十重禁戒の第三婬戒によって戒められる。法然も門人に対しては『七箇条制誡』においてこれを禁じている。ただし『一百四十五箇条問答』に肉食を許容する説示が見られ、『禅勝房伝説の詞』には「〔念仏を〕聖で申されずば妻を設けて申すべし」(聖典四・四八七)とあり、往生に関しては出家在家の違いはないというのが法然の基本的立場と言える。浄土真宗では親鸞以来の伝統として肉食妻帯を禁じていない。明治五年(一八七二)四月の「僧侶肉食妻帯勝手たるべし」の太政官布告以降、他宗派でも公然と行われるようになり、現代の日本仏教について考える上での重要な問題の一つとなっている。


【参考】中村生雄『肉食妻帯考』(青土社、二〇一一)、西川順子『女の力』(平凡社、一九八七)


【執筆者:市川定敬】