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称名念仏奇特現証集

提供: 新纂浄土宗大辞典

しょうみょうねんぶつきとくげんしょうしゅう/称名念仏奇特現証集

二巻。隆尭撰。称名念仏が余善に勝れていることを説き、庶民の布教に使われたもの。隆尭は、近江国金勝山東谷草庵で執筆し、上巻は応永二七年(一四二〇)、下巻は永享三年(一四三一)に成立。二一話が収録されている。題材は、隆尭の居住地近辺で自身が見聞した、念仏往生を遂げた人びとに求めているが、善導法然証賢等諸師の法語が中心となっている。また、御鬮みくじや霊夢により他信仰から念仏信仰へ改めるなど、室町時代の民間信仰を知る上でも貴重な書物である。自筆本・写本はなく、慶安四年(一六五一)と正徳二年(一七一二)の版本が存在する。


【参考】玉山成元「隆尭の著書と書写本について」(『三康文化研究所年報』四・五、一九七三)、伊藤唯眞「隆尭法印の『称名念仏奇特現証集』について」(『日本仏教の史的展開』塙書房、一九九九)、湯谷祐三「金勝山浄厳坊隆尭法印『称名念仏奇特集』の解題と翻刻」(『同朋大学仏教文化研究所紀要』一九、二〇〇〇)


【執筆者:𠮷水成正】