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知恩伝

提供: 新纂浄土宗大辞典

ちおんでん/知恩伝

上下二巻。撰者は了慧道光による後跋があることから道光と考えられるが、中野慧達、三田全信知恩寺五世智心とする。後跋によると、法然滅後七十余年の弘安五年(一二八二)頃の成立。法然の誕生から没後の門徒流罪までの「諸家の伝説を尋ね聞て集記せしめ」(法伝全七六五)たもので六二の記事から構成されている。本書は、元禄一六年(一七〇三)一一月に孝璘が義山の所持本を書写したものを後に恵山(真宗大谷派初代講師恵空の門弟か)が校合したもので、高瀬承厳が某書店で入手し、昭和五年(一九三〇)に紹介した。記事の大半の標目の下に「如絵詞」「如本伝」「同余伝」等と注記されており、他の伝記と同一の記事は省略されたとみられる。「絵詞」は、宝田正道によって、『九巻伝』を指すことが明らかにされた。「本伝」は、宝田は信瑞黒谷上人伝』と、三田は『四十八巻伝』と推考している。また宝田は、本書と『十巻伝』とは標目がほとんど符合し、深い関連があることを指摘している。


【所収】法伝全


【参考】高瀬承厳「望西楼選述の法然上人伝に就て」(浄土学一、一九三〇)、三田全信『成立史的法然上人諸伝の研究』(平楽寺書店、一九六六)、宝田正道『改訂新版 日本仏教文化史攷』(書苑、一九八五)、曽田俊弘「『知恩伝』について」(浄土宗総合研究所編『法然上人八〇〇年大遠忌記念論文集 現代社会と法然浄土教』山喜房仏書林、二〇一三)


【執筆者:曽田俊弘】