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無生野の大念仏

提供: 新纂浄土宗大辞典

むしょうののだいねんぶつ/無生野の大念仏

山梨県上野原市秋山の無生野地区に伝わる民間念仏。毎年旧暦の一月一六日と新暦の八月一六日に行われる。かつてはその年に選ばれた当役とうやくおよび相当役あいとうやくの家で行われていたが、平成二年(一九九〇)からは集会所で行われている。部屋には阿弥陀如来などの三つの掛け軸が掛けられ、道場と呼ばれる二間四方の区域を設ける。道場には、四隅に青竹を立て注連縄しめなわが張られ、また四隅から中央で交差するように縄を張り幣束へいそくを下げ、中央に太鼓と鉦が置かれる。次第は「道場入り」「道場浄め」が行われたあと、「ほんぶったて」と呼ばれる踊りに入る。踊りの演技は「一本太刀」「二本太刀」「ぶっぱらい」「教主の祈禱」「念仏のふた」「送り出し」「うちあげ」と次第し、終了するが、その中には病気平癒の意味を持つものが含まれている。大念仏は二時間ほど続けられるが、人々が太鼓や鉦を鳴らし経典などを唱え、小さい締太鼓や太刀をもって踊りながら周囲をめぐるなどする。この大念仏の由来は諸説あるが、後醍醐天皇の皇子である護良もりよし親王、その寵愛を受けた雛鶴姫、王子である綴連つづれ王の悲話にちなむとされている。国重要無形民俗文化財に指定されている。


【参考】秋山村誌編纂委員会『秋山村誌』(秋山村役場、一九九二)


【執筆者:名和清隆】