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浄土決疑鈔

提供: 新纂浄土宗大辞典

じょうどけつぎしょう/浄土決疑鈔

公胤撰。散逸。『醍醐本』および『四十八巻伝』では三巻、『古徳伝』では二巻、『正源明義鈔』では一巻と記されている。『四十八巻伝』四〇によると「『浄土決疑鈔』三巻を記して、『選択集』を破す。則ち学仏房を使者として、上人の室に送らるる…上巻の初めに、『法華』に〈即往安楽〉の文あり。『観経』に〈読誦大乗〉の句あり。読誦極楽往生するに、何の妨げかあらん。然るに、読誦大乗の業を廃して、唯、念仏ばかりを付属すという。これ大きなる誤りなりといえり」(聖典六・六一三~四)とあることから、諸行往生の立場からの『選択集』に対する非難書である。また、『正源明義鈔』には「建久七年(一一九六)の夏」(法伝全八六九)とあることから法然在世中に書かれたことが知られる。公胤は本書撰述後、法然に直接対面し浄土の法門について談じた後、自ら本書を焼き法然帰依したと伝えられる。


【資料】『醍醐本』、『古徳伝』


【参考】高瀬承厳「浄土決疑鈔製作の年代について」(『摩訶衍』一、一九二〇)、石井教道『選択集の研究—註疏篇—』(誠文堂新光社、一九四五)、三田全信『成立史的法然上人諸伝の研究』(光念寺出版部、一九六六)


【参照項目】➡公胤


【執筆者:米澤実江子】