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智景

提供: 新纂浄土宗大辞典

ちけい/智景

八世紀頃、生没年不明。智憬とも書く。興福寺の学僧。正倉院文書の「写経奉請啓」等によると、法相、華厳、因明、僧伝の経論疏釈三九部にその名が見られ、年代的には天平一四年(七四二)から天平勝宝五年(七五三)に及ぶので、この頃の人。「勝宝五年三月六日僧智景啓」に「審詳師書類」があり、審詳は華厳の法蔵の門下で新羅の人であることから考えると新羅教学の背景を持つ浄土教者と考えられる。『東域伝灯目録』に、著作として『無量寿経宗要指事』一巻、『同指事私記』一巻、『起信論同異章』一巻を、また『長西録』には『無量寿経私記』一巻を挙げているので、智景には多くの著作のあったことが推測される。法然は『阿弥陀経釈』に往生極楽の旨を説くのは「浄土三部経」に過ぎるものはないとして、その証拠に六文を挙げ、第五に「智景疏文」を挙げるが、内容については迦才の説と同意であるとして詳細は略している。


【資料】『正倉院文書』(『大日本古文書』三)、『東域伝灯目録』『長西録』(共に仏全一)、『阿弥陀経釈』(昭法全)、『往生要集義記』(浄全一五)


【参考】八木昊恵『恵心教学の基礎的研究』(永田文昌堂、一九六二)


【執筆者:金子寛哉】