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撰集抄

提供: 新纂浄土宗大辞典

せんじゅうしょう/撰集抄

鎌倉時代の仏教説話集。西行に仮託されているが著者は不明。建長二年(一二五〇)前後の成立と考えられている。九巻九冊の広本系と九巻三冊の略本系がある。広本は説話数一二一、略本は五八である。その内容は、神仏の霊験寺院縁起高僧や貴族、武士、女房、遊女などのさまざまな身分の人々の発心出家遁世修行往生などについて語られている。西行の詠んだ和歌や西行を主人公とする説話が多いこと、また体裁が西行が語り手であるかのように記されていることから、西行が記したものと長年考えられてきた。また説話の後半は、説話に基づく論評や批評に多くが割かれている。『撰集抄』は鎌倉時代初期の仏教説話集『閑居友かんきょのとも』の影響を受けたとされ、随所に『閑居友』からの引用が記されている。


【参考】安田孝子『説話文学の研究』(和泉書院、一九九七)、山口真琴『西行説話文学論』(笠間書院、二〇〇九)


【執筆者:工藤美和子】