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怨親平等

提供: 新纂浄土宗大辞典

おんしんびょうどう/怨親平等

怨親とは、自分を怨みに思う人と親しく思う人の意味で、両者に対して平等に接し扱うこと。仏教では大慈悲心を基とするから、怨敵も憎むべきではなく、近親者にも執着をせず、平等に哀憐する心を持つべきであることをいう。日本では武士階級の間に武士道の発展と共に成熟し、戦による敵味方の区別を超えて、分け隔てなく平等極楽往生を願い、すべての人畜の犠牲者を供養する碑の建立や塔婆供養、経典読誦などがなされた。慶長二年(一五九七)豊臣秀吉は敵軍の菩提を弔うために方広寺の前に巨大な塚を築き、その上に塔婆を立て大供養会を営んだ。その塔婆には「以充怨親平等供養 為彼築墳墓 名之以鼻塚 況又造立木塔婆一基」という文がある。


【資料】『過去現在因果経』、『高野春秋編年集録』一三


【参考】橋川正『怨親平等の思想』(『大谷学報』一〇—四、一九二九)


【執筆者:北條竜士】