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提供: 新纂浄土宗大辞典

げん/幻

まぼろしのこと。本来的には事物には実体というものがなく、無であるにもかかわらず、仮の相が現れて見える一種の影像をいう。ⓈⓅmāyāの訳。空法十喩の一つ。『放光般若経』には、「五陰はすなわちこれ幻、幻はすなわちこれ五陰なり。十二衰及び十八性も皆これ幻なり。三十七品及び仏の十八法もまたこれ幻なり」(正蔵八・一七上)とあり、『中論』には、「幻のごとく、夢のごとく、蜃気楼(ガンダルヴァ城)のごとくに、生はそのようであり、住はそのようであり、滅はそのようであると説明されている」(正蔵三〇・一二上)とある。すべての事物は因縁によって生じた仮のものであり、実体性がない。よって幻のように現れている相を幻相、その仮の存在を幻有げんう、また幻師や幻人などの幻術師によって化作けさされているとみるのを幻化げんけという。『大乗荘厳経論』には、幻術師が木片や石などを使って呪術の力によって幻を見せるという内容が説かれている(正蔵三一・六一一中)。


【資料】『無量寿経義疏』上、『無量寿経連義述文賛』中


【執筆者:薊法明】