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履物

提供: 新纂浄土宗大辞典

はきもの/履物

足全体を入れる「はきもの」をくつという。古来、くつせきのくつかのくつなどと呼んで、同じはきものでも、鼻緒はなおの付いた下駄や草履などの呼び名である「しょう」とは区別していた。履には素材により、糸鞋しがい伊止乃久都いとのくつ)・麻鞋まがい乎久豆をくつ)・木履ぼくり紀具都きぐつ)などがあり、時代・官職・天候・年齢などに応じてさまざまな履が用いられた。『啓蒙随録』によれば「履に和と漢との両用があり、吾が宗および天台、真言等の用いるのは和様である。禅宗の用いるのは漢様である…和様は官人が平常用いる浅履あさぐつ、漢様は紋緞どんす製である(趣意)」(初編二・二八オ)という。浄土宗では正式な儀式に用いる沓を履物といい、しゃく木履の二種があり、舃は導師が用いるものである。舃の字には「ぬいぐつ」「くつ」などの古訓があり、古来、唐(中国)で用いられていた、二重底で先端がやや尖った、布製の沓がその原型とされる。和名を「木宇良乃久豆きうらのくつ」ともいい、古くは桐などの木地の外側に帛布はくふを張ったものが用いられたが、最近は和紙を特殊加工した型に金襴などの布を張って作られている。木履式衆大衆履物である。古くは革製であったが、平安後期以降は桐の木地に黒漆塗りを施し、内側に紙を貼るようになった。足の甲に当てる沓敷くつしきには、表袴うえのはかまと同じ布裂を用いたという。先端が丸みを帯びていることから、鼻高びこう(通称はなだか)ともいわれる。これに金襴の布を貼ったものを草鞋そうかいという。現在では、土間や石敷の本堂が少ないため、これらの履物を堂内で使用することはまれで、晋山式落慶式庭儀式(練り行列)など、屋外の儀式に導師が舃を履く程度である。略儀には、白緒の草履を用いる。草履は、本来身近な植物を編んで、鼻緒を付けただけの質素なはきものであったが、江戸時代以降、裏を重ね、あるいは上等な表や鼻緒を付けるなど、高級な草履(雪駄)が考案された。


【執筆者:熊井康雄】


履物(舃)