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居士仏教

提供: 新纂浄土宗大辞典

こじぶっきょう/居士仏教

社会的に地位と教養をもち在家のままで仏教信仰し実践する人の仏教。原型はインド以来存するが、とくに中国で盛んになった。清の彭際清撰述の『居士伝』全五六巻には、後漢から清の乾隆年間に至る居士二〇〇名以上の言行を記しており、最後に選者の自伝も収載している。同書には、牟融、支恭明、劉遺民、傅大士、昭明太子、白楽天などを収める。明朝そしてとくに清朝になると、仏教教団の質の低下・無力化もあり、居士の中には僧侶を凌ぐ宗風粛正・行儀厳正を志す者が多く現れ、中国近世仏教居士仏教の時代ともいわれる。その時代の代表的な居士としては宋文森、畢紫嵐、周安士、彭際清が著名。彭際清は浄土信仰帰依浄土教に関する著書数種がある。清末から中華民国の初めにかけての仏教復興期に多くの仏教出版事業や慈善事業に尽力した居士の果たした役割は大きい。


【資料】彭際清『居士伝』(続蔵八八)


【参考】牧田諦亮『中国仏教史研究』二(大東出版社、一九八四)、中村元・牧田諦亮編『アジア仏教史』中国篇Ⅱ・民衆の仏教(佼成出版社、一九七六)


【参照項目】➡居士伝


【執筆者:佐藤成順】


明治期以後の日本において展開した在家者を主とした仏教運動。仏教近代化と密接な関わりを持つ。代表的なものとしては、田中智学の国柱会運動や鈴木大拙らの居士禅があるが、参加者の多くが在家者であった新仏教運動なども含めることができる。それらは既存の仏教界に対し、教団組織の再編や教学の刷新、近代的信仰の確立、積極的な社会関与などを求めて活動を行った。一方で、それらの活動は伝統仏教界との価値観の対立を内包していたため、教団との摩擦が起きることも少なくなかった。


【執筆者:江島尚俊】