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因陀羅網

提供: 新纂浄土宗大辞典

いんだらもう/因陀羅網

インドラ(帝釈天)の網。Ⓢindra-jāla。因陀羅珠網、帝網ともいう。帝釈天宮に荘厳されている宝網をいう。その各々の結び目には宝珠があり、それが互いに映し出され、その映し出された宝珠がさらに他の宝珠に映し出されるという無限の関係性について、仏教では世界の多くの物は重重無尽に関係し合っていることに喩える。また網は一点を持ち上げると全体の形が変わることから、世界因果関係はすべて連関しており、微小なる一こそが全体でもあり、全体が微小なる一の中に含まれるという華厳思想の世界観を、この世の主宰神であるインドラによって世界全体に広げられた網に喩える。『梵網経』という経名は、諸仏が衆生の様々な機に対して各々の教えを説き、各々の病気に応じて薬を与え、一人も漏らさず救うことが、あたかもインドラの網のようであることに由来する。『無量寿経』上の説法会座に集まった大乗菩薩についての所説中に「善く無畏の網を学して、…魔の網を壊裂し」(聖典一・二一六/浄全一・二)とあり、『無量寿如来会』では「善く因陀羅網を学し、能く魔網を破し」(浄全一・一四三上[1]とある。また聖聡の『大経直談要註記』一四に「彼の国、既に報土なる故に、譬えば因陀羅網の互いに無尽に出すが如し」(浄全一三・一七六)とある。なお、宮沢賢治の作品に「インドラの網」という短編がある。


【参照項目】➡重重無尽


【執筆者:北條竜士】