操作

カリスマ

提供: 新纂浄土宗大辞典

カリスマ/Charisma

特定の人物にみられる超自然的・超人間的で特異な資質や能力。また、その能力を具えた人物も指す。カリスマとはギリシャ語charis(恩恵)を由来とし、「恵みの賜物」という意味で用いられていた。新約聖書には「神の賜物、恩寵」といった用例がある。カリスマを社会学的に分析したのはドイツの社会学者M・ウェーバーであった。ウェーバーは、既存社会の中に異質な性格を持った集団が形成する要因としてカリスマに着目した。そのような集団は革新的または革命的な性質を有することが多く、既存社会と軋轢あつれきを起こしやすい。その一方で、カリスマは多くの場合が非日常的かつ非合理的であり、また特定の人格に基づくものであるため、カリスマによる支配形態は本質的に不安定にならざるを得ない。よって世襲や官職によってカリスマの継承を制度化することが試みられる。しかし、一旦この過程を経ると、今度はカリスマが既成の秩序を正当化しようとする機能を持ち保守的性格を帯びるようになる、と分析した。このカリスマ概念に基づくならば、法然自身が特異な資質や能力(確固たる阿弥陀仏信仰口称念仏へ特化した信念、卓越した学識など)を持ち、法然を慕って集う集団が形成され、その集団が既存権力と軋轢を起こしていたという事実から、法然カリスマとして捉えることも可能であろう。


【参考】マックス・ウェーバー著/世良晃志郎訳『支配の諸類型』(創文社、一九七〇)、C・リンドホルム著/森下伸也訳『カリスマ』(新曜社、一九九二)、佐々木宏幹他編『カリスマ』(春秋社、一九九五)


【執筆者:江島尚俊】