操作

オカルト

提供: 新纂浄土宗大辞典

オカルト/occult

ラテン語occulereの過去分詞occulta(目に見えないもの、隠されたもの)を語源とし、意味としては超自然的な出来事や神秘的な現象を指す。それらを追求・探求する姿勢や知識体系のことをオカルティズム(occultism)という。オカルティズムは神秘学、オカルト主義、隠秘学などと訳され、一般には、近代西洋の神秘主義運動や秘密結社、秘術結社などの主義、世界観、知識およびそれに基づく活動実践を意味する。ただしオカルティズムの語は時代や地域によって様々に用いられていたのが実際である。神秘思想家・人智学者のR・シュタイナー(一八六一—一九二五)はオカルティズムを普遍的概念として用いるべく自省的に再定義を行った。それによるとオカルティズムとは、直感に基づきながら超自然的な存在や法則などを捉えようとする技術的・精神的な営みを経た結果として得られる知識体系とされた。また、一般的にオカルトやオカルティズムは宗教と深いつながりがあり、その他にも哲学や音楽、美術などとも密接に関わってきたとされる。特に、神との出会いや合一などの神秘主義的な体験を重んじる思想や思考形態を重視するかたちでオカルトは展開された。しかし一方で、合理的思考や経験的実証によって世界を理解しようとする近代自然科学とは相反するため、オカルト科学の側から「怪しい、胡散臭い」など負の価値をもつものとして批判された歴史をもつ。現代日本においてオカルトとは、メディア上の用語や一般用語として定着し、上記のような負の価値をもつものとして流布している。心霊写真や憑依ひょうい体験、霊的能力や超能力など、一般常識では理解不可能な現象が一括りにされオカルトと呼称されているのが実情である。


【参考】ミルチャ・エリアーデ著/楠正弘・池上良正共訳『オカルティズム・魔術・文化流行』(未来社、一九七九)、フランス・カルルグレン著/高橋明男訳『ルドルフ・シュタイナーと人智学』(水声社、一九九二)


【執筆者:江島尚俊】