浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0397A01: | けるに。鉦の音する家あり。かの男いはく。尼公の |
J18_0397A02: | ゆく處は。ここにて聞給へとをしへて去りぬ。やが |
J18_0397A03: | て其家におとなひたるに。本勇尼にいませるかと答 |
J18_0397A04: | て。いで來るは。紀州にて早くしる人にてぞ有け |
J18_0397A05: | る。やがて師の御旅宿へまうでて。其事聞申けれ |
J18_0397A06: | ば。それなん。西宮の大神にておはすなるを。さら |
J18_0397A07: | ば吾も法樂して。拜謝し奉るべしとて。暫念佛し給 |
J18_0397A08: | ひぬ。本勇も始て。其人のただ人ならざりし事をお |
J18_0397A09: | もひ合されしとて。涙おとしてこの事かたりぬ。素 |
J18_0397A10: | より本勇が深信を。神のあはれがり給ひたらんなれ |
J18_0397A11: | ども。おのづからなる師の餘德の。いたす所なるべ |
J18_0397A12: | きにや。 |
J18_0397A13: | 或夜の夢に。八九歳ばかりの小沙彌の。いと殊勝な |
J18_0397A14: | るが。端ぢかう居給ふを見らる。何人にてまします |
J18_0397A15: | ぞと問れければ我は若地藏にて。何もなしと答へ給 |
J18_0397A16: | ふ。覺て後。このほとりに地藏堂やあると尋らるる |
J18_0397A17: | に。此あたりの聖天堂に。古き地藏尊おはすといへ |
J18_0397B18: | り。師行て見給に。夢に見給へる如き菩薩の。坐光 |
J18_0397B19: | もいつしか失たるがたたせ給へり。持返り給ひて。 |
J18_0397B20: | 辯了沙彌に仰て。坐光を作らしめられけり。享和二 |
J18_0397B21: | 年極月十七日の夜なり。又夢見らく。高山に登り給 |
J18_0397B22: | ひけるに。其絶頂より麓に至るまで。幾多ともなく |
J18_0397B23: | 地藏菩薩の尊像立せ給ひしを。こはけしかる事よ |
J18_0397B24: | と。おぼしながら。拜み奉らるるに。滿山の草木砂 |
J18_0397B25: | 石。悉皆地藏尊の御姿に變じ。一花一葉といへど |
J18_0397B26: | も。みなこの尊像にあらざるものなしと見給ふ。其 |
J18_0397B27: | 餘。前夜にこの菩薩を夢に見奉りしあけの日。六地 |
J18_0397B28: | 藏の開眼願ひ來りし事もあり。或はこの菩薩の乘給 |
J18_0397B29: | へる船に。師ものられしなど。屢屢この菩薩を夢に |
J18_0397B30: | は見給ひしとぞ。此一條は勝尾寺にての事なり |
J18_0397B31: | 或時喜平次。雛鶴一羽を得て。庭に養ひけり。羽翼 |
J18_0397B32: | すでに成る時。師の來給ければ。能折なり。あは |
J18_0397B33: | れ。鶴に。御十念賜るべきよし乞申けり。鶴は常に脛 |
J18_0397B34: | を折しく事はなきを。師の來らせ給へるを見て。や |