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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0374A01: 德本行者傳
J18_0374A02:
J18_0374A03: 師。諱は德本。名蓮社號譽稱阿彌陀佛と號せり。紀
J18_0374A04: 州。日高郡。志賀の庄。久志村。田伏氏の家に産
J18_0374A05: る。其先
J18_0374A06: 桓武天皇に出て。畠山尾張守政長の裔なり。寬正。
J18_0374A07: 文明の間。政長管領の職をつかさどる。明應二年の
J18_0374A08: 度。河内國正覺寺の城にて。終に戰死せり。二男子
J18_0374A09: あり。兄を尚順といひ。弟を久俊といふ。久俊紀州
J18_0374A10: にのがれて。山林に竄居し。家名を隱して。田伏と
J18_0374A11: いふ。久俊より七代の孫を三太夫といふ。すなは
J18_0374A12: ち。師の先考なり。先妣は鹽崎氏の女なり。男子な
J18_0374A13: き事を歎て。竊に夫婦三寶に祈請す。先妣或夜蓮華
J18_0374A14: をのむと夢見ることありて。寶曆八年戊寅の六月廿
J18_0374A15: 二日。午の正中に師を誕せり。時に異香室に滿て菡
J18_0374A16: 萏の初て開時に異ならず。見聞の人人。奇異のおも
J18_0374A17: ひをなせり。童名を三之丞といふ。眼に重瞳あり。
J18_0374B18: 雙眸かがやける事。晴夜の星の如し
J18_0374B19: 寶曆九年の秋。八月十五日の夕。姉に抱ながら。さ
J18_0374B20: し出る月の玲瓏たるを見給ひ。始て南無阿彌陀佛と
J18_0374B21: ぞ稱られたりける。いまだ襁褓にありて。何のわき
J18_0374B22: まへもなかるべきに。誰にならひ給へるにやとて。
J18_0374B23: 感歎せざるものなかりきとぞ。むかし聖德皇太子。
J18_0374B24: いまだ幼稚にましましける時。南無佛と稱玉ひし
J18_0374B25: 御跡にも。思ひあはせられて。いと尊くぞ覺ける。
J18_0374B26: 四歳の秋。隣家の小兒。俄に死夫ぬるを見て。隣兒
J18_0374B27: いづこに行しぞ。又あふ事ありやと。母堂に問れた
J18_0374B28: るに。既に死せるものの。いかでかまたあふ事の有
J18_0374B29: べきと。答られたるを聞て。師いたく驚けるさまに
J18_0374B30: て。我平常睦しかりしを。再會べくもなしと聞。あ
J18_0374B31: な悲しいかにせんとて號泣給ふ。母堂喩していは
J18_0374B32: く。およそ死といふ事は。貴賤男女。賢愚老少。誰
J18_0374B33: もまぬがるるものなし。且死したるものの歸來べき
J18_0374B34: 理あらんや。汝この事を歎かば。はやく彌陀佛をた

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