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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0130A01: ごとの宿忌に各こころに任せて。一會づづも念佛せ
J18_0130A02: らるべし。又佛前にわが位牌を立置ことあるべから
J18_0130A03: ず。われ曾て世上を見るに。佛前の中心に靈牌を安
J18_0130A04: じ。祠位を嚴かに飾りて。只亡者のみを大切に供養
J18_0130A05: し。本尊をは疎略にし奉る事まま多し又參詣の人
J18_0130A06: も。先位牌の方に向ひて。本尊をは次に思ひなす風
J18_0130A07: 情。往往にあり。加樣の事。以の外にわが心に違へ
J18_0130A08: り。努努これあるべからずと。此外云云の遺語あり
J18_0130A09: といへとも。具に記するにあたはず。扨看病給侍の
J18_0130A10: 者に。記念の品品。遺囑し賜はりける。右件の條條
J18_0130A11: 門弟等。をのをのこれを領掌し。すなはち廿五日よ
J18_0130A12: り門弟一人づづ枕頭に伺候して。稱名の助音を致
J18_0130A13: す。師久しく病に染て。身躰疲れ給ふといへとも。
J18_0130A14: 稱名の氣色。勇猛精至なる事。平生の時よりも勝れ
J18_0130A15: たり。本より病苦なかりけれは。近近に命終し給ふ
J18_0130A16: へき樣には見え侍らず。然れども師の稱名の氣色
J18_0130A17: は。只今命終に臨み給ふかと覺ゆる程に勇猛にぞ見
J18_0130B18: え侍る
J18_0130B19: 一同廿六日師看病の者に語りていはく。今しばらく
J18_0130B20: まどろむとおもひし内に。莊嚴微妙なる大伽藍の門
J18_0130B21: 外に至る。指入て佛前を拜しけれは。本尊には法花
J18_0130B22: の題目を懸たり。堂内には僧衆大勢集りて。法花經
J18_0130B23: 讀誦するなるべし。我心に思ふやう。大乘妙典の功
J18_0130B24: 德廣大なること言を以て宣べからず。今此勝縁にあひ
J18_0130B25: ぬる事。悅ひの至りなり。いざ立寄て結縁せんと。
J18_0130B26: 則所作くりながら。縁の上まて臨けれは。讀誦の音
J18_0130B27: 聲遒亮として。聞くに隨喜の思ひを增し。心もすみ
J18_0130B28: わたりて覺えけるに。凉しき風さへ吹來て。快く結
J18_0130B29: 縁するとおもふ内に。程なく夢覺ぬと。師此事を語
J18_0130B30: りおはりて。双眼に涙を浮べ。ありがたき結縁をも
J18_0130B31: しつる者哉と。歡喜のよそほひ色にあらはれて見え
J18_0130B32: しかば。看侍の者も。師の法に於て。偏頗なき事を
J18_0130B33: 感じ奉りけり。もし偏僻の念佛者などこの夢を感ぜ
J18_0130B34: は。念佛の道塲ならで。法花の結縁本意ならずと。

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