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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0123A01: を聞し人。みなその勇猛精進の儀を感ぜずといふ事
J18_0123A02: なし。かの心戒上人の常に蹲踞せられし風情。古德
J18_0123A03: の。暫時もこれなけれは。死人に同じといへる事。
J18_0123A04: 思ひ合せて。いと貴ふとし。又禪林の拾因に。傳聞
J18_0123A05: 有聖。念佛爲業專惜寸陰。若人來謂自他要事。
J18_0123A06: 聖人陳曰。今有火急事。既逼於旦暮塞耳念佛終
J18_0123A07: 得往生とあるを。師ひそかにこれを慕ひて。所居
J18_0123A08: の草庵を塞耳と號し。寤寐に稱念して。片時も懈ら
J18_0123A09: ず。能かの聖の跡を學はれ侍る
J18_0123A10: 一師自修の專なるのみにあらず。兼て有縁を勸め
J18_0123A11: て。法誨おこたりなかりき。吉水大師曾て聖覺法印
J18_0123A12: に示して宣へる事あり。淨土宗の學者は。先此旨を
J18_0123A13: 知べし。有縁の人の爲には。身命財を捨ても。偏へ
J18_0123A14: に淨土の法を説べし。自の往生の爲には。諸の囂塵
J18_0123A15: を離れて。專念佛を修すべし。此二事の外。また
J18_0123A16: く他の營なしとぞ仰られける十六門紀今師の制誡錄を
J18_0123A17: 見るに。大悲を荷擔して。敎化に懶き事なけんと誓
J18_0123B18: はれ侍る。全く祖師の寶訓に相叶ひ侍るをや。師素
J18_0123B19: より。懸河の辯を具して音聲淸亮なり。唱導の材を
J18_0123B20: 兼て。多衆を勸奬せらる。されは惡趣の恐るべきあ
J18_0123B21: りさま。淨土のねがふべき粧ひ。波瀾舌端に起り。
J18_0123B22: 珠玉口吻に生ず。一たび高座に昇られしかは。道俗
J18_0123B23: 聞をかたふけ。貴賤耳を淸む。この故にわづかに至
J18_0123B24: り向はるる所は。遠近踵をつぎ。數千萬人。群をな
J18_0123B25: して來詣すること。盛なる市よりも甚し。その勸化の
J18_0123B26: 詞。諄諄として。農民樵夫漁父獵師の輩。幼年の小
J18_0123B27: 兒までも。一たび其説を聞て。信心を激發し。立地
J18_0123B28: に惡を改め。佛を稱ふる類ひ。其數をしらず。邊域
J18_0123B29: の佛化に疎き所にて。かく國こぞりてまふするあり
J18_0123B30: さま。誠に權化の人ならては。かかる不思議はあり
J18_0123B31: がたかるべしとぞ覺え侍る。至誠の人に入ること深
J18_0123B32: しとは。この謂なるべし
J18_0123B33: 一師伊達郡飯野村觀音寺にて。折折法談ありけり。
J18_0123B34: 或時法談の後。彼地の同行一兩輩と。野邊に出て眺

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