浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
巻_頁段行 | 本文 |
---|---|
J17_0694A01: | ○同國の北山に紫雲たなびきけるを見て。尋ね行給 |
J17_0694A02: | ふに。いかにも淸淨無塵の勝境なり。爰に住して念 |
J17_0694A03: | 佛し給ふに鹿猿に至るまで化益を蒙ること夥し。諸人 |
J17_0694A04: | したひ來り程なく一宇を草創し。心驚無常山淨發願 |
J17_0694A05: | 寺と號す。此寺今は朱章を給はりぬ。然るに此一の澤 |
J17_0694A06: | と塔の峯とは溪山相隔ること凡十里なり。二山の間上 |
J17_0694A07: | 人日夜往來し給ふに。その疾こと風のごとし。或は晨 |
J17_0694A08: | 朝は塔の峯にて勤修し。日中は一の澤にて執行し給 |
J17_0694A09: | へり。兩山兼住の間。都て六年を經たり。 |
J17_0694A10: | ○巖窟寒風いと烈しかりけるに。不思議や空より大 |
J17_0694A11: | 磐石降來りて北に落。宛も扉のごとくなりて自から |
J17_0694A12: | 寒風を屏け身心安居し給へり。此石に上人爪彫の彌 |
J17_0694A13: | 陀とて今現に儼然として存在す。此石の上より日毎 |
J17_0694A14: | に紫雲たなびき夜毎に聖衆の來迎あり。その傍に櫻 |
J17_0694A15: | 有此木を伐て上人自の姿を刻み置なんとて斧を運ら |
J17_0694A16: | し給ふ半に。忽ち熱血流れ出けれは。唯此ままにし |
J17_0694A17: | て足ぬべしとて。袈裟を覆ひ函に入て釘を打てぞ殘 |
J17_0694B18: | し給ふ。此半作の像今現に淨發願寺に有。 |
J17_0694B19: | ○夫より遠州堀江の里舘山の巖窟に入念佛し給ふ |
J17_0694B20: | に。例のごとく化を蒙るもの市のごとし。或は漁獵 |
J17_0694B21: | を止。あるひは五辛を斷。或は齋戒念佛す。玆にし |
J17_0694B22: | て又一宇を取立蓮花寺と號す。濟度の人數都て貳百 |
J17_0694B23: | 七十萬餘なりき。 |
J17_0694B24: | ○堀江の里を初め近隣の男女。毎年七月二日より十 |
J17_0694B25: | 六夜にいたる迄を限り。斷肉潔齋して白き浴衣に菅 |
J17_0694B26: | の笠を着。各棹に縋り鉦と太鼓をうち交て聲をはか |
J17_0694B27: | りに念佛す。此事の由來を尋るに。昔時甲斐信玄公 |
J17_0694B28: | 合戰の節。數萬の軍兵此里堀江に沈み死したりき。 |
J17_0694B29: | 其亡魂雨夜ごとに光り渡り聲を揚。野山に鯢波を作 |
J17_0694B30: | る。國民これを驚怖して上人に歎きければ。上人告 |
J17_0694B31: | て宣く。我敎に遵ふて箇樣箇樣に念佛を修しなば再 |
J17_0694B32: | び出まじと示し給ひける。その示のごとくつとめけ |
J17_0694B33: | れば果して速にしづまりぬ。それより永く傳はりて |
J17_0694B34: | 今に斯のごとく修しぬることになんなりけるとぞ。是 |