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J2340 円光大師御伝縁起 忍澂 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J16_0985A01: せ給ひけるとぞ。誠にためしなき。不可思議の御善
J16_0985A02: 事なりけり。正本副本兩部の御傳。おのおの四十八
J16_0985A03: 卷の繪詞。德治二年に初まり。十年あまりの春秋を
J16_0985A04: へて。其功ことごとく成就し給ひぬ。就中。伏見院
J16_0985A05: 御落飾の後は。上皇世の政を知しめして。ことに御
J16_0985A06: いとまましまさざりける。比しも。なを衆生利益の
J16_0985A07: ために重寫の御沙汰まで思召入させ賜ひけん。御宿
J16_0985A08: 善の程。よもおぼろけの事には侍らじ。さればいに
J16_0985A09: しへより。今の世まで。御傳の利益の。世に盛なる
J16_0985A10: を思へば。みな上皇の御賜なり。かたじけなきには
J16_0985A11: 侍らずや。これぞげに。かの王身をもつて得度すべ
J16_0985A12: きものには王身を現じて。爲に説法すとなんいへ
J16_0985A13: る。普門示現の御跡なるべし。さらではいかにと。
J16_0985A14: すずろに感涙をもよほし侍る。さて重寫の御本を
J16_0985A15: ば。世間に流布して。衆生を利益すべしとて。舜昌
J16_0985A16: にぞ給はりける。これより世こぞりて。敕集の御傳
J16_0985A17: と稱して。展轉書寫して。ひろく京夷にひろまりけ
J16_0985B18: れば。諸人の尊重する事。はるかに。往昔門人の書
J16_0985B19: 記にこえたり。されば道俗貴賤。御傳を拜見して。
J16_0985B20: 念佛門にいる人はなはだおほく。法印の嘉名も。遠
J16_0985B21: 近に聞えしかば。其比台徒の中に。いきどほりをな
J16_0985B22: す人出來て。舜昌名を我山の衆徒にかりなから。顯
J16_0985B23: 密の行業をさしをきて。ひとへに念佛の興行を致し。
J16_0985B24: あまさへ他師の行狀を記せる事。はなはだ其いは
J16_0985B25: れなしと。そしりをなすともがら。山洛の間に聞え
J16_0985B26: ければ。法印又述懷鈔をつくりて。山門にぞをくら
J16_0985B27: れける。其略云老愚齡すでに八旬にせまりて。病し
J16_0985B28: きりに五内ををかす。なにのいさみありてか。身に
J16_0985B29: 憍慢をいだき。心に偏執をおこさんや。非器不堪の
J16_0985B30: 身は。永く聖道難行の研精に堪ざるゆへに。淨土易
J16_0985B31: 行の悲願をたのむばかりなり。これまたく入聖得果
J16_0985B32: の敎を。いるかせにするにもあらず。又利智精進の
J16_0985B33: 人を。さみするにもあらず。抑彌陀本願の念佛往生
J16_0985B34: は。一代敎主釋尊の誠諦の言なり。六方恒沙諸佛の

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