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Z0380 西要鈔諺註 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0143A01: れども。はれ〲と手に取たるやうにはなし。●(五〇)
Z08_0143A02: 又時々命のあやうき事。臨終のありさまなども。お
Z08_0143A03: もひいだしては。しきりに往生も。心もとなく。地獄
Z08_0143A04: の迎もおそろしく。今にも死なば。こは何とかせんと
Z08_0143A05: 肝をつぶす事あり。露ちりほども。氣遣をなすなとの
Z08_0143A06: をしへなるに。かくおもうも。うたがひといふものに
Z08_0143A07: して侍ることなり。●(五一)いまだ往生せぬ間は。た
Z08_0143A08: れとてもおぼつかなきものなり。されば道綽禪師は。
Z08_0143A09: 往生の得否を。定中の佛に決しまします。瑞應傳。惠心の
Z08_0143A10: 僧都は。これを吉野の巫女に占しめ。みづから辻占を
Z08_0143A11: 聞給へり。故事談。砂石集。をよそ信なきものは。その氣遣もな
Z08_0143A12: し。おぼつかなきは。信心のふかきゆへなり。●(五二)
Z08_0143A13: あまり大事とおもへば心にか〻りて肝つぶす事もあ
Z08_0143A14: るものなり。それを。すこしも氣にかけぬがよきぞと
Z08_0143A15: なり。○心ゆるひずとは。紅葉の賀の河海抄に。心緩の
Z08_0143A16: 字なり。○あつかはしとは。もてあつかふ義なり。○む
Z08_0143A17: ねつぶる〻とは。肝のつぶる〻義なり。何事も心にか
Z08_0143A18: かる時は。ふとわれから心にか〻るなり。箒木卷に。お
Z08_0143A19: ぼす事のみ。心にか〻り給へれば。まづむねつぶれて
Z08_0143A20: とあり。きもすぎてとは。おどろく心なり。●(五三)
Z08_0143B01: 是は佛の力を信ぜぬゆへに。實にうたがひといふも
Z08_0143B02: のなり。●(五四)これはわが機をもうたがはず。佛の
Z08_0143B03: 本願をもうたがはず。厭欣のゆるさをもうたがはね
Z08_0143B04: ども。いまだ現に。往生のしるしをみぬゆへに。氣遣の
Z08_0143B05: はれぬ人なり。○按ずるに疑に二あり。安心の疑は。往
Z08_0143B06: 生の障なり。起行の疑は。障とならず決答。今この女人
Z08_0143B07: のいへるは。これらのうたがひにもあらず。た▲心も
Z08_0143B08: となきうらおもひなり。●(五五)是には。いかにもた
Z08_0143B09: しかなる故事の侍らん。たづねかんがふべし。○それ
Z08_0143B10: 岩に松は。おふべくもなきものなれども。そのたねあ
Z08_0143B11: れば。おひいづるなり。そのごとく。たとひ信心のうる
Z08_0143B12: ほひなくとも。本來具足の佛性あれば。いかでか往生
Z08_0143B13: を遂ざらんとなり。月淸集に。如是因の心を。たねしあれは佛
Z08_0143B14: の身ともなりぬへし。岩にも松はおひけるものを。本歌
Z08_0143B15: は古今ならし。●(五六)閑亭後世物語。ある時。法然上人
Z08_0143B16: のたまはく。あはれ此度。しおほせばやと。その時乘願
Z08_0143B17: 房うけたまはりて。上人だにも斯樣に。不定げなる仰
Z08_0143B18: の候はんには。ましてその餘の人は。いか▲候べきと。
Z08_0143B19: 上人うちわらひて。まさしく蓮臺にのぼらんまでは。
Z08_0143B20: いかでか此おもひは。たゆむべきと仰られけり。語灯第五

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