浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0378A01: | 師。野に出て農事をつとむる時は。鋤をもて念珠に |
J18_0378A02: | 代。山に登りて薪をこるには。念佛をもて樵歌とな |
J18_0378A03: | す。敢て人の見聞をはばからず。或時は草根木實を |
J18_0378A04: | 食料に充られし事あり。そは苦行の堪不を試んが爲 |
J18_0378A05: | 也とぞ。月毎に小池村の大日尊。鐘卷の觀世音に詣 |
J18_0378A06: | て。はやく出俗の願を果ん事を祈れけり。 |
J18_0378A07: | 天明二年の春。財部村往生寺の住持。大圓大德に就 |
J18_0378A08: | て。五戒をなん受られける。 |
J18_0378A09: | 同三年夏のころ。食後。夢のごとく持佛堂の扉。お |
J18_0378A10: | のづから開けて。本尊阿彌陀佛の御長一丈ばかりに |
J18_0378A11: | 現じ。師の許にあゆみよらせ給摩頂し給へり。母堂 |
J18_0378A12: | も傍にありて。おぼろけにこの事を見られきとぞ。 |
J18_0378A13: | 同し頃。佛前の瓶中に。蓮華一莖おひいづるを見 |
J18_0378A14: | る。十四日を經て。又相並で小蓮華一朶を生ず。師 |
J18_0378A15: | と母堂のみ此花を見といへども。餘人には見えざり |
J18_0378A16: | き。師いよいよ策勵念佛し給ひけるに。蓮華ます |
J18_0378A17: | ます生長し。四十日ばかりを經て。或夜。更闌人し |
J18_0378B18: | づまりて。師佛前に念佛し給ふに。たちまち瓶中の |
J18_0378B19: | 蓮華十分に開。金色の光明煥爛として。障壁をとほ |
J18_0378B20: | し。母堂の寢所を照す。母堂驚て佛間を伺ふに。師 |
J18_0378B21: | 光明の中に端坐念佛せらるるさま殊勝いはん方なか |
J18_0378B22: | りきとぞ。 |
J18_0378B23: | 師或日。心地洞然として。宛も大桶の底の打拔し如 |
J18_0378B24: | くなりたり。これなん一分の透脱などいふべきに |
J18_0378B25: | や。或は。室内悉大光明ありて。其中にあまたの佛 |
J18_0378B26: | ましますを見給へる事あり。これ又一分の念佛三昧 |
J18_0378B27: | を發得せられたるなるべし。 |
J18_0378B28: | 或時。夢に。大河を渡り。山に登りてみれば。峯に |
J18_0378B29: | も尾にも。佛身遍滿し玉へるを見る。又地藏菩薩か |
J18_0378B30: | ぎりもなく遍滿し給りとも見る。またあるひ。暫ま |
J18_0378B31: | どろまれたる夢に。日輪の西に傾くをみる。覺て眼 |
J18_0378B32: | をひらけば。光明の中に大日如來現じ給へり。即大 |
J18_0378B33: | 日と日輪とは。素より不二なる事を了知し給へりと |
J18_0378B34: | ぞ。毘盧舍那を。光明遍照と譯する蜜軌にも契て。 |