浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0124A01: | 望せられけるが。山間に破れ傾きたる茅屋の見えし |
J18_0124A02: | を。あれはいかなる者の住所にやと問はれけれは。 |
J18_0124A03: | 同行の人かしこには。癩病人ども數多集り居候よし |
J18_0124A04: | 申す。師申されけるは。彼等は定て法化に預る事も |
J18_0124A05: | あるまじけれは。他生には又冥より冥に入り。苦よ |
J18_0124A06: | り苦に入りなん。いと不便の事なりと。すなはち彼 |
J18_0124A07: | 小屋に立入て勸化せられ侍りしに。思ひの外に彼者 |
J18_0124A08: | ども。たちまち信心を催し。ことごとく日課念佛を |
J18_0124A09: | 拜受してけり。其中に手足繚戾し。指なと落たるも |
J18_0124A10: | ありて。數珠を取り。員を認ることあたはず。いかが |
J18_0124A11: | し侍らんと尋ね申せしかは。師告られけるは。此中 |
J18_0124A12: | に數珠を持て勤る者の側に居て。其者の數を以て。 |
J18_0124A13: | わが數を知るべしと。敎へられしに。皆ことごとく |
J18_0124A14: | 悅びあへり。その後。かの者共相寄て。本尊を請じ |
J18_0124A15: | 奉り。鉦皷など求て。勇猛に念佛相續しけるとなん |
J18_0124A16: | 聞え侍る。昔極樂寺の忍性菩薩。伽摩羅疾の者あま |
J18_0124A17: | た集めて。其食を給し。爲に八齋戒を授け給ひしと |
J18_0124B18: | なん元亨釋書慈心物にあまねき事。古今一揆なるものを |
J18_0124B19: | や |
J18_0124B20: | 一信夫郡八町目。安達郡本宮なといへるは。遊君あ |
J18_0124B21: | また住む所なり。師ひそかに思へらく。たまたま爪 |
J18_0124B22: | 上の人身をうけ。龜木の佛敎にあふといへども。淫 |
J18_0124B23: | 女のつたなき報ひを得て。日夜に障罪を重ね。空し |
J18_0124B24: | く惡趣に沈みなん。いとかなしきわざなりと。すな |
J18_0124B25: | はちみづから彼所に行て。彌陀の本誓。もとより機 |
J18_0124B26: | の善惡を簡ばざれば。深く本願を賴みて至心に念佛 |
J18_0124B27: | せば。往生疑ひあるまじき旨。ねんごろに敎化せら |
J18_0124B28: | れしに。遊君の中。深く信心を發して日所作なと受 |
J18_0124B29: | しものあまたこれありとなん。長明がいへる如く。 |
J18_0124B30: | 宅をならふる住民は。人を宿して主とし。窓にうたふ |
J18_0124B31: | 君女は。客をとどめて夫とす。あはれむべし千年の |
J18_0124B32: | 契りを。旅宿の一夜の夢に結ひ。生涯の樂みを。往 |
J18_0124B33: | 還の諸人の望に係く。翠悵紅閨萬事の禮法ことなり |
J18_0124B34: | といへども。草の廬柴の扉一生の歡會これおなじ。 |