浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0693A01: | 傳へ聞て至り浴するもの衆病忽く痊。今現に塔の澤 |
J17_0693A02: | の藥湯と號するもの是なり。 |
J17_0693A03: | ○既にして上人の德風四方に聞え。道俗貴賤步を運 |
J17_0693A04: | び。日課念佛を授り。或は葷酒を斷じ。或は齋戒を |
J17_0693A05: | 持ち。身命をもおします樹下石上にして念佛し。山 |
J17_0693A06: | 河もゆるぐばかりなり。衆人力を合せて忽ち一宇を |
J17_0693A07: | 造立しぬ。上人是を名付て阿彌陀寺と號し給ふ。時 |
J17_0693A08: | に龍神歸敬し毎夜龍燈を挑げたり。又或時箱根權現 |
J17_0693A09: | 貴女の姿を現じ來りて血脉を受給ひ。不滅の貝を達 |
J17_0693A10: | 嚫に備へて去り給ふ。後に又別當に神託ありて又一 |
J17_0693A11: | の貝を獻じ給ふ。二の貝今現に當山にあり。 |
J17_0693A12: | ○又上人或時柄の島辨財天に詣し祈請して宣く。我 |
J17_0693A13: | 衆生濟度の志ありといへとも凡夫疑惑の情深くして |
J17_0693A14: | いかんともしがたし。願はくは尊天加護し給へと。 |
J17_0693A15: | 時に辨天出現し金の團扇を捧げ。是を持て諸障を扇 |
J17_0693A16: | ぎ拂ひ。念佛を弘通し給へとて授け給ふ。此團扇今 |
J17_0693A17: | 現に當山にあり。爰に道高ければ魔盛なる驗にや。 |
J17_0693B18: | 或時虚空より大盤石を投て佛閣を微塵に打摧きた |
J17_0693B19: | り。然れども數千群集の人。壹人もあやまちなし。 |
J17_0693B20: | 有がたき事かなと感歎しき。 |
J17_0693B21: | ○麓の小田原に大蓮寺あり。寺主を鏡譽以天とい |
J17_0693B22: | ふ。智道兼備の聞へあり。深く上人に歸し常に登山 |
J17_0693B23: | 怠りなじ。或時上人に告ていはく。上人の德行利益 |
J17_0693B24: | の程愚意に測りがたし。然れども有髮にましませ |
J17_0693B25: | ば。人おほくは恐れを懷くべし。願はくは御髮を下 |
J17_0693B26: | させ給へと申されければ。上人答て宣く。此事甚だ |
J17_0693B27: | 易し。去なから予が髮を剃人は壽命早く盡るなり。 |
J17_0693B28: | いかがせんと。以天の云く我諸人の爲に命を捨て疾 |
J17_0693B29: | 極樂に往生せん。是願ふ所なり。上人納受して正念 |
J17_0693B30: | を護らせ給へとて。御髮を下し給へば。えならぬに |
J17_0693B31: | ほひ室にみち。音樂遠く聞え。紫雲西にたなびきけ |
J17_0693B32: | れば。端坐合掌して念佛と共に息絶たり。不思議の |
J17_0693B33: | 事なり。慶長十年三月廿五日の事なりき。其の剃髮 |
J17_0693B34: | 今現に當山にあり。 |