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J2540 弾誓上人絵詞伝 宅亮 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0693A01: 傳へ聞て至り浴するもの衆病忽く痊。今現に塔の澤
J17_0693A02: の藥湯と號するもの是なり。
J17_0693A03: ○既にして上人の德風四方に聞え。道俗貴賤步を運
J17_0693A04: び。日課念佛を授り。或は葷酒を斷じ。或は齋戒を
J17_0693A05: 持ち。身命をもおします樹下石上にして念佛し。山
J17_0693A06: 河もゆるぐばかりなり。衆人力を合せて忽ち一宇を
J17_0693A07: 造立しぬ。上人是を名付て阿彌陀寺と號し給ふ。時
J17_0693A08: に龍神歸敬し毎夜龍燈を挑げたり。又或時箱根權現
J17_0693A09: 貴女の姿を現じ來りて血脉を受給ひ。不滅の貝を達
J17_0693A10: 嚫に備へて去り給ふ。後に又別當に神託ありて又一
J17_0693A11: の貝を獻じ給ふ。二の貝今現に當山にあり。
J17_0693A12: ○又上人或時柄の島辨財天に詣し祈請して宣く。我
J17_0693A13: 衆生濟度の志ありといへとも凡夫疑惑の情深くして
J17_0693A14: いかんともしがたし。願はくは尊天加護し給へと。
J17_0693A15: 時に辨天出現し金の團扇を捧げ。是を持て諸障を扇
J17_0693A16: ぎ拂ひ。念佛を弘通し給へとて授け給ふ。此團扇今
J17_0693A17: 現に當山にあり。爰に道高ければ魔盛なる驗にや。
J17_0693B18: 或時虚空より大盤石を投て佛閣を微塵に打摧きた
J17_0693B19: り。然れども數千群集の人。壹人もあやまちなし。
J17_0693B20: 有がたき事かなと感歎しき。
J17_0693B21: ○麓の小田原に大蓮寺あり。寺主を鏡譽以天とい
J17_0693B22: ふ。智道兼備の聞へあり。深く上人に歸し常に登山
J17_0693B23: 怠りなじ。或時上人に告ていはく。上人の德行利益
J17_0693B24: の程愚意に測りがたし。然れども有髮にましませ
J17_0693B25: ば。人おほくは恐れを懷くべし。願はくは御髮を下
J17_0693B26: させ給へと申されければ。上人答て宣く。此事甚だ
J17_0693B27: 易し。去なから予が髮を剃人は壽命早く盡るなり。
J17_0693B28: いかがせんと。以天の云く我諸人の爲に命を捨て疾
J17_0693B29: 極樂に往生せん。是願ふ所なり。上人納受して正念
J17_0693B30: を護らせ給へとて。御髮を下し給へば。えならぬに
J17_0693B31: ほひ室にみち。音樂遠く聞え。紫雲西にたなびきけ
J17_0693B32: れば。端坐合掌して念佛と共に息絶たり。不思議の
J17_0693B33: 事なり。慶長十年三月廿五日の事なりき。其の剃髮
J17_0693B34: 今現に當山にあり。

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