浄土二蔵二教略頌
提供: 新纂浄土宗大辞典
じょうどにぞうにきょうりゃくじゅ/浄土二蔵二教略頌
一巻。『二蔵略頌』あるいは『略頌』ともいう。聖冏撰。永徳三年(一三八三)成立。聖冏によって著された一六六の偈頌からなる著作。自らこの書を注釈した『釈浄土二蔵義』三〇巻とともに、聖冏の思想を代表する書物である。全一六六偈頌は序分・一偈、正宗分・一六四偈、流通分・一偈に分類される。さらに正宗分の一六四偈は、一偈(全体で言うと第二偈)が三師教相について、四四偈(第三偈~四六偈)が声聞蔵について、三二偈(第四七偈~七八偈)が菩薩蔵の漸教について、八七偈(第七九偈~一六五偈)が菩薩蔵の頓教について言及する構成となっている。さらに菩薩蔵の漸教については、七偈(第四七偈~五三偈)が初分教、二五偈(第五四偈~七八偈)が後分教について説いている。菩薩蔵の頓教については四偈(第七九偈~八二偈)が性頓について、八三偈(第八三~一六五偈)が相頓について説いている。この相頓についての八三偈が浄土門についての言及である。なお正宗分一六四偈頌は『釈浄土二蔵義』によれば、さらに細分することができる。本書はわずか一六六の偈文によって、仏教のすべてをまとめたものであり、これをなした聖冏の学徳が十二分に発揮された書といえよう。
【所収】浄全一二
【参照項目】➡釈浄土二蔵義
【執筆者:石田一裕】