一得永不失
提供: 新纂浄土宗大辞典
いっとくようふしつ/一得永不失
ひとたび戒体を発得した者は永劫にそれを失うことがないという、円頓戒の重要な概念。授戒の儀式を受けて持戒の目的を確立することで、本来具えていた戒体(持戒実践の原動力)が活動を開始する。戒体は受者各々に具わっている以上、たとえ戒を犯すことがあっても決して失われることはないという考え方。『本業瓔珞経』の戒体思想を淵源とし、慧思『授菩薩戒儀』に継承され円頓戒の中心的概念となった。大玄は『円戒啓蒙』で、戒体の本質は失われないが、犯戒すれば当然のように罪となり悪果を招くと述べている。
【資料】大玄『円戒啓蒙』
【参考】恵谷隆戒『円頓戒概論』(大東出版社、一九七八)
【執筆者:渋谷康悦】