四縁
提供: 新纂浄土宗大辞典
しえん/四縁
四つの縁。すなわち①因縁②等無間縁③所縁縁④増上縁の四種。Ⓢcatvāraḥ pratyayāḥ。縁は因と区別され間接的な条件や関係性を意味することもあるが、四縁の「縁」は因と同義であり、原因という意味である。①因縁(Ⓢhetu-pratyaya)とは、直接原因となる縁。たとえば草花に対する種のようなものであり、結果に対して明確な原因となるものが因縁である。②等無間縁(Ⓢsamanantara-pratyaya)は次第縁ともいわれる。この縁は心に関するもので、現在の心が生じるための原因となる過去の心のこと。現在の心は、直前の過去の心を拠り所として生じるもので、両者は心として等しく、また現在の心は直前の過去の心と連続して生じるもので、間をあけて生じないから、等無間縁という。③所縁縁(Ⓢālambana-pratyaya)は、縁縁ともいわれる。所縁とは対象のことであり、所縁縁とは、認識の対象となって心を生じさせるあらゆるものごとのこと。④増上縁(Ⓢadhipati-pratyaya)とは、間接的な原因となる縁であり、ある一つのものは、それ以外のすべてのものの増上縁である。つまり、ある一つのものは、その他すべてのものの存在を妨げないという点で、それらが存在するための原因とみなされる。これは、要するに、無関係であることを縁として認めたもの。また増上縁の「増上」とは「広い」ことを示すものであり、このような関係は、因縁・等無間縁・所縁縁よりも広く認められるから、増上縁と呼ばれる。なお浄土教では、善導の説示によって、念仏者のうける阿弥陀仏の本願力を増上縁といい、これに五種を説く。さらに善導は阿弥陀仏の放つ光明が、念仏者のみを救いとる理由として親縁・近縁・増上縁の三種を挙げている。
【資料】『俱舎論』七、『観経疏』
【参考】櫻部建・上山春平『存在の分析〈アビダルマ〉』(角川書店、一九六九)
【執筆者:石田一裕】