極楽浄土の菩薩にも苦があること。善導『観経疏』には「今、苦楽と言うは二種有り。一には三界の中の苦楽、二には浄土の中の苦楽。三界の苦楽というは、苦は、すなわち三塗八苦等。…浄土の苦楽と言うは、苦はすなわち地前を地上に望めて苦とし、地上を地前に望めて楽とし、下智証を上智証に望めて苦とし、上智証を下智証に望めて楽とす」(聖典二・二七九/浄全二・五一下~二上)と説かれ、浄土に住む初地以前の菩薩が初地以上の菩薩に対してもつ感覚が浄土の苦であると解釈し、三途(地獄・餓鬼・畜生)や八苦のような三界における苦とはまったく次元の異なるものと位置づけている。
【執筆者:吉水岳彦】